第34章 -強引-(黒尾鉄朗)
「すみれっ!」
人混みを掻き分け、すみれたちに追いつき、大将と手を繋いでいないほうのすみれの手を取ると、すみれと大将はビックリしたようにオレを振り返った。
「…っ⁈鉄朗っ⁈」
「なんだよ?黒尾、邪魔すんなって!しっしっ…」
大将が嫌そうな顔をして、手でオレを追い払おうとする。
「おまえ、ミカちゃんに振られたからって、すぐすみれに乗り換えてんじゃねーよ‼︎」
「振られてませんーー‼︎振ったんですーー‼︎つぅか、すみれちゃんはおまえの幼なじみかもしんねーけど、今はオレとデート中なのっ!邪魔しないでくれますかーー⁈」
「はぁ⁈オレが先約だったんですけどーー⁈」
…っ⁈
やべっ…”オレとデート中”って大将のことばがグサリと心に刺さる。
すみれは幼なじみなのに…こいつなんかよりはるかにオレのほうがすみれの近くにいるのに…すみれと2人で出掛けたのなんか…いつだったっけ…?
「つぅか、もうおせぇよ。オレたち付き合うコトになったから!さっきチュウだって…」
「えっ⁈ま…まだ返事…」
「はっ⁈」
オレは大将のことばにブチ切れ、そのまますみれを引き寄せた。
「来い‼︎すみれ‼︎話があるっ!」
「おい‼︎ふざけんなって‼︎」
「うるせぇ!すみれと2人で話させろ!」
オレは大将をその場に置いて、人がいない路地へすみれを連れていった。
「すみれ‼︎ほんとなのか⁈」
すみれはブスッと膨れたまま、下を向いていた。
「おい‼︎こっち向けって!」
すみれをムリヤリ上を向かせると、すみれは涙目になっていた。
「い…今更なんなの⁈鉄朗が忘れてたのに‼︎わたしのコトなんかいつも忘れちゃうのに‼︎だから…もうやめようと思ったのに…なんで今更…」
「やめるって…何をだ…?」
すみれの目をジッと見つめると、すみれは涙をポロポロこぼしている。
「…泣くなって。」
すみれの涙を拭おうとするが…
「やっ…」
すみれに拒まれてしまう。
はぁ…もう遅かった…か。
「大将と付き合うのか?」
オレは手を引っ込めて、せめてすみれの口から聞いてフラれようと思い、すみれに尋ねる。