第34章 -強引-(黒尾鉄朗)
「…付き合ってない。告白されて…返事待ってもらってる。」
マジか⁈
「でも、あいつ、チュウしたって…」
「それはさっき…わたしが食べてたリンゴ飴…一口大将くんが食べたから…たぶんそのコト…」
はぁぁぁ⁈あいつ…カマかけやがって!
「…話はそれだけ?わたし…もう戻るよ?」
すみれはいつのまにか涙を拭いていて、スマホを取り出した。
「待てよ‼︎行くな‼︎」
オレはすみれを行かせまいと、これでもかってくらいきつくすみれを抱き締めた。
「悪かった…。頼む…行くな!行かないでくれ!」
「てつ…ろう…?」
最初はこわばっていたすみれの身体から力が抜けていくのがわかった。
「なぁ?さっき言ってた”やめようと思った”って何?」
「それは…その…」
オレは少し力を緩め、すみれの顔を覗き込んだ。
「なぁ?自惚れていいか?オレと同じ?オレのコト好きなの…やめようと思ったのか?だったら…やめるの無しにしてくんねぇ?」
「え…?」
「オレは…すみれが好き。誕生日も約束もいっつも忘れて最低かもしんねーけど、好きなんだよっ!なんだかんだ、すみれはいつもオレの横にいてくれるから…オレ、おまえに甘えすぎてた…。」
これでダメなら、本当に諦めるしかねぇよな…。
オレは黙ってすみれのことばを待っていると、すみれが急にオレを見上げてきた。
「わたしも好き。鉄朗が好き‼︎ずっと好きだったよ‼︎でも…もう諦めなきゃって思って…鉄朗のバカ〜ッ‼︎」
初めてすみれから、オレにギュッとしてきた。
すみれのことばと行動に、オレは安堵して、また強く抱き締めた。
「悪かったって。」
「もう忘れないでよ?」
「あぁ。つぅか、言ってくれればいいじゃん!」
「それじゃあ、意味ないもん!」
「そうだよな。今から誕生日たくさん祝わせて…」
オレはまたすみれの顔を覗き込み…
…チュ。
すみれの唇にキスをした。
「鉄朗っ⁈」
「誕生日プレゼントその1?
間接キスとはいえ、上書きしねーとな。」
オレはすみれを抱き締めたまま、ポケットからスマホを取り出し、ヘビ野郎にメッセージを送った。
『すみれはやんねーよ!わりぃな!』
---End---