• テキストサイズ

〜Lemon Candy Story〜

第33章 -笑顔-(武田一鉄)


ボクがハンカチを差し出すと、
すみれちゃんは
ハンカチを目に当てながら、
話を続けた。


「わたし、看護師になったら、
患者さんのこと…
全力で救いたいって思って、
でも、わたしは梅さんを…
助けることができなかった…
そればかりか、
わたしが梅さんを励まさなきゃ…
助けなきゃいけないのに、
わたしばっかり梅さんに励まされて…
わたし…もっと梅さんに…」


泣きながら話すすみれちゃんに、
ボクはたまらなくなり、
すみれちゃんを抱き締めた。


「…っ⁈」


すみれちゃんは
ビックリしていたけど、
張り詰めていた糸が切れたかように、
声をあげてボクの胸で泣き出した。


しばらくして、すみれちゃんは
恥ずかしそうに顔をあげた。


「ごめんなさい…ワイシャツ…
濡らしちゃって…」


「ワイシャツなんか、
気にしなくて大丈夫だよ。」


ボクはすみれちゃんに微笑み、
話を始めた。


「たしかにすみれちゃんの仕事は
こういうことが、
これからたくさん起こるでしょう。
でも、すみれちゃんが頑張ることで、
元気になって退院する患者さんも
たくさんいるはずですし、
すみれちゃんの頑張りは、
梅さんに伝わっているはずです。」


「え…?」


すみれちゃんは泣き腫らした目で
ボクを見上げた。


「だって、梅さんがいつも笑顔だったのは、すみれちゃんが頑張ってる姿を見て
自分も頑張ろうって思ってたからだと、
ボクは思うんです。
だから…すみれちゃんは、
そんな気持ちを忘れないで、
患者さんを助けたいって気持ちで、
明日からも頑張ろう!…ね?」


「一鉄…さん…」


ボクが話し終えると、
ポカンとしているすみれちゃん…


「ご…ごめん‼︎
つい力んじゃって熱く…ひ…引いた?」


「ふふ…」


今度はボクが慌ててしまうと、
すみれちゃんはクスクス笑い出した。


「ありがとう、一鉄さん‼︎
なんか…すごく元気が出てきました!
明日からも頑張ります!」



すみれちゃんのこと…
ボクが守りたい。
ずっと一緒に居たい。



満面の笑みで微笑む
すみれちゃんの表情を見て、
ボクはそう思った。


/ 579ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp