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〜Lemon Candy Story〜

第33章 -笑顔-(武田一鉄)


〜4年前〜


「あっ!ご…ごめんなさいっ!」


手が触れてしまった女性は、
少し赤くなって手を引っ込めた。


「いや、ボクのほうこそすみません。」


「いえ、わたしが…」


図書館なのでお互い小声で謝り合った。


「どうぞ。これですよね!」


一緒に触れた本を取り、彼女に手渡す。


「え⁈でも…貴方がさきに…」


「ボクはもう読んだことがあるので。」


「あ…わたしも読んだことあるので‼︎」


彼女の慌てぶりに
思わず笑みがこぼれてしまう。


「この本…好きなんですか?」


「は…はいっ!大好きです!!
あ…あのっ…その…本が…っ…」


「ふふ…しーっ。」


…可愛いなぁ。


少し大きめな声で自分で言ったのに、
慌てている彼女が
なんだか可愛らしくて、
ボクはまた自然に笑顔になっていた。


そのまま別れ、
ただの図書館でのひとこま…
そう思っていて、その時は彼女と
また会うことになるなんて、
まったく思ってもいなかった。


それから何週間かたって、
高校時代からの友達、
深山のお見舞いのため、
学校帰りに病院に行った。


学校から近い病院だったので、
学校帰りでも
面会時間には十分間に合った。


入院しているとはいえ、
久々の友人との会話に
盛り上がっていると…


トントン…ガチャ。


「深山さん、今日は楽しそうですね。
でも、検診の時間で…


「「あっ‼︎」」


深山の病室に入ってきたのは、
図書館で出会ったあの女性だった。


「なに⁈武田、知り合い?」


「あ…」


「深山さん!採血、今日は
頑張ってくださいよ〜?」


ボクがなんて言おうか迷っていると、
彼女は深山の検診を始めたが、
心なしか彼女は
頬を赤らめている気がした。


「あ…あの…っ‼︎」


面会時間が終了し、
ボクが病室から出ると、
ナースステーションを
通りすぎたところで、
後ろから控えめな声で呼び止められ、
振り向くとあの女性がいた。


「あ…あの…‼︎こんなこと急に…
し…失礼かもしれませんが…
わたし、もうすぐで終わるんです!
よ…よかったら…あの…お…
お茶しませんかっ⁈」


図書館の時とは打って変わり、
小さい声で
真っ赤になりながら言う彼女に
ボクはまた笑みがこぼれていた。

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