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〜Lemon Candy Story〜

第32章 -花火-(黒尾鉄朗)


「それは…その…鉄朗くんが…
浴衣…女の……て…」


すみれは下を向いたまま、
しどろもどろ話し始めたが、
何を言ってるのかわからない。


「ん?なんだよ?
ちゃんと言えって。」


すみれのそばに行き、
すみれの手を取ってもう一度聞く。


「て…鉄朗くんが…
浴衣姿の女のコ見てたからっ!」


「は⁈…いつ…?」


「花火大会行こうって言った日…
デート中にすれ違った浴衣の女のコ…
ジッと見てたから…
ちょ…ちょっと…悔しくて…」


すみれは手を繋いでいた
オレの指を触りながら、
下を向いたまま言った。


「なに?つまり、なんつぅか…
ヤキモチ妬いてくれたわけ?」


「…っ⁈」


すみれはビクッと反応したあと、
小さくコクンと頷いた。


なんだそれ?
めっちゃ可愛いんだけど…‼︎


オレはそのまますみれを
抱き締めようとしたが、
珍しくすみれが喋り続けたので、
オレは予定変更で、
すみれの肩をそっと押さえた。


「でも、すれ違ったコとか、
今日の花火大会にいた女のコみたいに
可愛い色の浴衣なんて、
もう着れないし…」


「は?おい…すみれ?」


今度はすみれのことばを遮ったが、
すみれは止まらない。


「鉄朗くん、花火大会行かないで
帰ろうとするから、ほ…ほんとは、
わたしの浴衣じゃ…イヤだっ…」


「はーい。そこまで!」


オレは強引に
すみれのことばを遮り、
肩においていた手をおろし、
すみれをゆっくり抱き締めた。


「すみれさ…可愛すぎるんだけど。」


すみれを抱き締めたまま、
片手ですみれの頭を撫でる。


「イヤなわけねーだろ?
つぅか、めっちゃ嬉しくて、
ドキドキしてたんだけど?」


すみれの顔を覗き込む。
外灯に照らされたすみれの顔は、
真っ赤になっていた。


「で…でも…」


「ん?なーに?」


「やっぱりいい…」


「なんだよー?この際だから、
ちゃんと言えってー。」


すみれのホッペを軽くつねる。


「いたっ…‼︎か…可愛いって…
言ってくれなかったもん!」


「は…?」


いやいやいや…
今日だけでオレがどんだけ可愛いと
思ってたことか…
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