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〜Lemon Candy Story〜

第32章 -花火-(黒尾鉄朗)


土手の上まで登り切り、少し歩くと、
広い間隔でポツポツある外灯に
照らされたベンチがある。


「ちょっと待ってて。」


「えっ⁈鉄朗くん⁈」


そこのベンチにすみれを座らせ、
オレはスマホで足元を照らし、
川のほうへ土手を下り、
目的の物を取って
すみれの元へ戻った。


「わりぃ、ちょっと手間取ったわ。」


すみれのトコへ戻ると、
ベンチに座っていたはずのすみれは
立っていて、オレに抱きついてきた。


「急にいなくなったら…
こ…怖いじゃない!」


…っ⁈


やべぇ…なんだ⁈
すみれがいつも以上にかわいい。


「悪かったって。暗くて、思ったより
探すの手間取っちまったんだよ。」


すみれの頭をポンポンとして、
背中を優しく撫でてから、
すみれの目の前に
取ってきた物を出す。


「え…⁈はな…び…?」


オレの手にあったのは花火セット。


今日、すみれに会う前に
昔研磨とよく遊んだ”宝の隠し場所”に
今日は花火セットを隠しておいた。



ちゃんと小さなバケツも用意してある。



盗まれないか心配だったが、
ガキの頃の遊び場が、
思わぬところで役にたった。


「そ♪…な?花火大会できんだろ?」


「う…ん。でも、鉄朗くん…
大きな花火…
見たかったんじゃないの?」


「は⁈」


突拍子もないすみれのことばに
オレはポカンとしてしまった。


「いや、オレが見たかったのは、
花火じゃなくてだなぁ?」


オレはそこまで言って、
すみれを抱き寄せた。


「かわい〜いすみれの
かわい〜い浴衣姿だけど?」


「えぇっ⁈」


すみれはビックリして後ずさる。


「そんなビックリするコトかよ?」


オレはいったんすみれから離れ、
横の水道でバケツに水を入れながら、
話を続けた。


「すみれ、人混み嫌いだろ?
でも、浴衣姿見たかったし…。」


「そ、そんなこと…
言ってなかったじゃない!」


「言ったら着てくれたのかよー?」


「う…それは…」


恥ずかしがり屋のすみれが、
素直に着てくれるとは思えない。


「つぅか、オレが花火見たいと思って、
浴衣着てくれたのか?」



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