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〜Lemon Candy Story〜

第32章 -花火-(黒尾鉄朗)


でも、反対側にはリエーフがいた。
しかも…


「なに?おまえら、ラブラブなの?」


檜原の手元に
すぐ気付いていたオレは、
そのまま檜原の手元を
ジッと見続けた。


キョトンとした檜原は
自然にオレの視線を追い、
やっとオレの言葉の意味に気付く。


「ち…ちが…っ‼︎わ、忘れてた‼︎
リエーフくん‼︎ありがとう‼︎
も、もう大丈夫だから‼︎」


檜原とリエーフは
手を繋いだままで、
檜原は慌てて
リエーフから手をはなしたが、
リエーフは不満そうだった。


「えー?オレ、すみれ先輩と
手ぇ繋いで花火見たかったー‼︎」


「えっ⁈あの‼︎そ、それは…‼︎
あ、えっと…ほら、花火始まるよ!」


檜原はオレとリエーフの間で
まだ上がらない花火を待って、
夜空を見上げていた。


「ちゃんと見えそうか?」


リエーフが芝山から
フランクフルトを奪いに行った隙に
オレは檜原に話し掛けた。


「う…うん。」


檜原はやっぱり空を見上げていて、
オレのほうは見ない。


「なぁ?」


「え?な、なぁに?」


「あー、なんだ?
檜原って好きな奴とかいんの?」


「えっ⁈あの…」



ドーーーーン‼︎ドドドドン‼︎



檜原の返事を聞く前に
花火が始まった。


カラフルな大きな花が
夜空に咲いては消えていく。


「うわぁっ…‼︎」


檜原は花火に目を奪われ、
目を輝かせて夜空を見上げていた。


オレは花火を見るふりをしながら、
檜原の手をそっと握った。


「…っ⁈くろ…っ⁈」


花火を見上げていた檜原の視線が
少しだけ下がり、
いつもは見ないオレの目を、
大きな目を見開いて覗き込んでいた。


「なぁ?2人で別のトコで見ねぇか?」


檜原の耳元で囁き、
オレは檜原の手を握ったまま、
少しずつ後ろに下がり、
そっと人混みから抜け出した。


「く…黒尾くん⁈」


檜原に名前を呼ばれるが、
オレはそのまま檜原の手を引き、
人混みからどんどん離れ、
誰もいない公園まで来た。


ここまで来れば誰もいないし、
少しだが、まだ花火も見えた。

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