第32章 -花火-(黒尾鉄朗)
「このほうがすみれの近くで
花火見れるだろ?」
すみれの可愛い髪飾りをおさえ、
すみれの耳元で囁く。
すみれの耳は真っ赤だった。
「今日…2人になって…オレ、
めっちゃ嬉しかったんだからな?」
ドーーーーン!
そこで一発目の
大きな花火があがった。
オレは花火の音に掻き消されないよう、
さらにすみれの耳元に顔を寄せ、
囁いた。
「オレ…おまえのコトが好き。」
オレのことばに、
すみれがビクッとして、
一瞬固まったのがわかった。
「……も…」
すみれが何か答えたが、
花火の音で声が聞こえない。
オレはすみれの口元に顔を寄せたが、
すみれはオレの顔を押し返し、
すぐにすみれはオレの手を
握り返してきて、なぜかゆっくり
オレの掌を指でなぞった。
ゆっくり…ゆっくり…
その間も花火は絶え間無く、
夜空に打ち上がる。
わ
た
し
も
す
き
「…っしゃぁ‼︎」
すみれのメッセージに
オレは、柄にもなく
大声で喜んでしまった。
ま、花火の音に掻き消され、
その声はオレとすみれにしか
わからないか。
オレは幸せでいっぱいで、
夜空に咲く花火を見上げた。
---End---