第30章 -翻弄-(金田一勇太郎)****
「はぁぁぁ…」
「金田一…五月蝿い。」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ…」
「金田一、ウザい。」
すみれとわかれ、
部室で国見と着替えているが、
オレの頭は”すみれのケン”で
いっぱいだった。
”ケン”て誰だ?
ウチの部の誰かか⁈
誰か”ケン”…って…⁈
オレはクルリと
部室のロッカーを見回す。
…⁉︎
”京谷賢太郎”
ま…まさか…”ケン”て京谷さん⁈
つぅか…
オレのコトは”勇くん”なのに、
夢の中のヤツは”ケン”て呼び捨てだし…
あ…国見のコトだって…
国見はまぁ…従兄弟だけど…
オレのモヤモヤは、
どんどん濃くなっていき、
オレはいたたまれなくなり、
さりげなく国見に聞くコトにした。
「な…なぁ?国見…」
「もう…何?」
無視されるかと思ったが、
国見はめんどくさそうに
返事をしてくれた。
「あ…あのさ!その…
すみれの知り合いで…
”ケン”…て…その…いたりするか?」
「”ケン”…‼︎あぁ…”ケン”…ねぇ。」
「…‼︎国見‼︎何か知ってるのか⁈
ちゃんと教えてくれっ‼︎頼むっ!」
オレは国見の肩を掴んで見つめた。
「でも…知らないほうがいいコトも…」
何故だか国見は言いにくそうに
ことばを濁した。
「いやっ‼︎教えてくれっ‼︎
すみれのコトは全部知りたいんだ!」
「そこまで言うなら…」
国見は、観念して、
はぁっと息を吐き、オレを見た。
オレは国見のことばを待つ。
「いいか?落ち着いて聞けよ?
すみれにとって…
ケンは…大事な男だ。」
「そ…そんな…‼︎」
終わった…
オレの初恋…
さよなら…
オレの初恋…