第30章 -翻弄-(金田一勇太郎)****
「勇くん!遅い〜‼︎」
「あっ‼︎ご…ごめんっ‼︎」
今日も部室で
散々先輩たちにからかわれ、
(主に及川さんの八つ当たりのような
気もするけど…)
つい付き合うキッカケになった
1ヶ月前のコトを思い出しながら、
ニヤニヤして校門へ行くと、
すみれのほうが先に待っていた。
「も〜。勇くんのほうが遅かったから、
ぐんぐんヨーグルトだよ?」
「えっ⁉︎ごめん!うん。わかってる!」
「今日は手繋いで帰らないから〜。」
「えっ⁈手⁈えぇっ⁈」
ツーンとスネたように歩き出すすみれを
慌てて追いかける。
「だって約束だもん。」
「そ…そうだけど…」
「あ!あそこの自販機、
ぐんぐんヨーグルトあるよね♪」
さっきまでの
スネたすみれは何処へやら。
自販機を見つけたすみれは
嬉しそうに駆けて行った。
「勇くん、買って〜。」
「わかってるって。」
自販機でぐんぐんヨーグルトを買う。
「わぁい♪勇くん、ありがと〜う♪」
すみれはさっそくストローを差し、
美味しそうに飲み始めた。
「やっぱり美味しい〜♪」
可愛らしいすみれの喜ぶ笑顔、
チュ〜ッとストローを吸う
すみれの可愛らしい唇…
ジュースが通る喉元…
オレはすみれのすべてに
目を奪われていた。
「どうしたの?」
「い、いや‼︎なんでもないっ‼︎」
オレの視線に気付いたのか、
すみれは上目遣いで
オレを見上げてきた。
「勇くんも飲みたい⁇飲む⁇」
「えっ⁈」
すみれが自分が飲んでいた
ぐんぐんヨーグルトを
オレの口元へ差し出してきた。
「いいよ♪一口あげる!」
満面の笑みのすみれ…
「いや…でも…」
「いらないの?」
オレが躊躇すると、
途端にすみれが悲しそうな顔をする。
「い…る…りますっ!」
オレはすみれの手を押さえ、
ストローに口を付け、一口飲んだ。
「美味しい?」
「う…うん‼︎」
オレが頷くと、
すみれはニッコリ笑い、
オレの手をグッと引いて、
耳元で囁いた。
「間接キス…しちゃったね♪」
「なっ…⁈」
オレはすみれに翻弄されっぱなしだ。