第30章 -翻弄-(金田一勇太郎)****
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『すみれちゃんて
どんな人がタイプなの〜?』
1ヶ月前…すみれと付き合うまでは、
オレは”檜原さん”と呼んでいたが、
及川さんはいとも簡単に
”すみれちゃん”と下の名前で呼んでいて、
すみれの隣を歩いていた。
もちろん、部活帰りで皆いると、
オレはすみれの隣へは行けず、
国見の隣を歩きながら、
それでもすみれの声に耳を傾けていた。
『その時好きになった人が
タイプです♪』
『え〜?それじゃわかんないじゃん。』
今度は花巻さんが、
及川さんがいないほうの
すみれの隣へ行き、
すみれの顔を覗き込んだ。
『花巻さんもカッコ良くて
ステキだなって思ってますよ♪』
すみれも花巻さんの顔を覗き込み、
花巻さんにニコッと微笑んだ。
『(ドキッ…)マジッ⁈
じゃ、オレと付き合っちゃう♪?』
『えー⁉︎マッキーずるい!
すみれちゃん、
及川さんにしときなよ♪』
『あはは♪
お2人ともそんなコト言っちゃって
いいんですか♪?
お2人に言ってもらえるなんて嬉しいな♪』
すみれが2人に向かって
満面の笑みを見せると、
オレに対しての笑顔じゃないのに、
眩し過ぎて
オレまでドキドキしてしまう。
自分にしとけ…だなんて
オレは絶対言えない…
及川さんが羨ましい…。
オレは1人悶々としながら、
及川さんたちの話を聞いていた。
『じゃあ、すみれちゃんて、
この中なら誰がタイプなの?』
そこでスッと
及川さんたちの会話に入ったのは、
矢巾さんだった。
『え?この中…?』
その時いたメンバーは、
及川さん、花巻さん、岩泉さん、
松川さん、それに矢巾さん、
渡さん、国見と…オレ。
すみれはぐるりとまわりを見渡す。
『ん〜…』
1人1人順番に見ていき、
最後にオレのほうをチラリと
すみれが見た時に目が合った。
『この中なら金田一くんがいいです♪』
『『『えぇっ⁈』』』
そこにいた全員が一斉にオレを見た。
『えぇっ⁈あの⁈えっ⁈オ…オレ⁈』
『うん!この中で選ぶなら、
やっぱり金田一くんがいい♪』
すみれは皆の反応に
キョトンとしながらも、
オレに向かってニコッと微笑んだ。