第29章 -自信-(花巻貴大)
わたしがまた凹んで下を向いていると、
花巻くんに肩を揺すられ、
名前を呼ばれていたコトに
やっと気付いた。
ドキッ…
「は…花巻くん⁈」
「すみれちゃんさ…」
花巻くんはくるりとわたしのほうを向き、そのまま立ち止まると、
わたしの肩にあった手を、
どんどん上にあげていき…
スッとわたしの両頬に手を当てた。
えっ⁈な…なに…コレ⁈
キス…されちゃう…⁈
わたしは思わずギュッと
目を閉じようとしてしまうが…
…⁈⁈
花巻くんは当然キスなどせず、
わたしの両頬をムニュ〜っとした。
「ひゃ…ひゃにゃま…⁈」
「ははっ…変な顔〜♪」
「な…っ⁈」
わたしは恥ずかしくて、
慌てて花巻くんから離れた。
「ははっ…ごめんごめん。
だってすみれちゃん、
小難しい顔してんだもん。」
「え…?」
「すんげぇ眉間に皺寄ってた!」
花巻くんはそう言うと、
わざと自分も眉間に皺を寄せ、
わたしの顔を覗き込んだ。
「そ…そんなことないもん!」
わたしは頬が赤くなるのを感じながら、
眉間をさすった。
「あんまり悪く考えてると、
どんどん悪い方にいっちゃうからさ。
”わたしはうまい‼︎わたしはうまい‼︎”って
思いながらやればいいんじゃない?」
「そ…そんなのムリだよっ‼︎」
「なんで〜⁇」
花巻くんは本気で不思議そうに
わたしに聞き返してきた。
「自信…ないから。」
「うーん?
ないなら、持てばいいじゃん♪」
「え…?」
二カッとして平然と言ってのける
花巻くんにわたしは呆気にとられてしまう。
そりゃ…花巻くんみたいに
明るくてかっこ良くて運動できたら…
「…あぶねっ‼︎」
「きゃっ…」
カシャ…ッン‼︎
突然すごい速さのバイクが横切り、
わたしは花巻くんに手を引かれ、
すんでのトコロで引かれずに済んだ。
「すみれちゃん、怪我ない?大丈夫?」
「うん。…⁈あっ‼︎」
わたしはスッと花巻くんの腕から離れ、
しゃがみ込んだ。
バイクを避けた勢いで、
ブレザーのポケットから
スマホが落ちていて…
ストラップが壊れていた。