第29章 -自信-(花巻貴大)
「じゃ、頑張ってね♪」
ちえりに見送られ、部室を出ると、
待ち合わせ場所に花巻くんはもう来ていた。
わたしはもう1度、
ブレザーのポケットに入れた
スマホのストラップをギュッと握り、
花巻くんに駆け寄った。
「花巻くん‼︎
ごめんね‼︎遅くなっちゃった…」
「大丈夫大丈夫♪女のコ待たせるのは、
オレの主義じゃねーし♪
じゃ、行こっか。」
「う…うん!」
花巻くん…やっぱりモテるよね…。
花巻くんの横を歩くだけで
ドキドキする。
わたしはこっそり
花巻くんの横顔を見つめた。
「なぁに?」
「えっ⁈」
「今、オレのコト見てた♪」
「えっ⁈あの…ちがっ…‼︎
その…やっぱり大っきいなと思って…‼︎」
花巻くんの横顔を見ていたコトが
すぐにバレてしまい、
わたしは咄嗟にごまかしたけど、
花巻くんはクスクス笑っていた。
「そう?まぁ、すみれちゃん、
いつもちーちゃんと一緒にいるから
そう感じるんじゃねーの?
ちーちゃん、ちっこいからなぁ。」
「うん。ちえりは小さくて可愛いよね。
性格も明るいし…」
「ははっ♪
たしかにちーちゃんは明るいな。
あの岩がはじめから普通に
話してたくらいだしなー。
でも、オレからしたら、ちーちゃんも
すみれちゃんもちっせーよ。」
「えっ⁇」
ニッと笑いながら言った花巻くんが、
わたしの頭をポンポンとして、
わたしと身長差を測るように、
わたしの頭から自分の頭へ、
手を上下に動かした。
わたしは思わず花巻くんを見上げて、
じっと目を見つめてしまう。
「…っ⁈⁈(今上目遣いかよ⁈)
あ…まぁ…あ!そういや、
すみれちゃん、なんで凹んでるの?」
「あ…えっと…」
わたしは花巻くんから目をそらし、
今度は下を向いてしまった。
「いいから♪話してみなって。」
「うん…あのね、
試合になるとうまくできなくて…
今日もサイン読み間違えたり、
相手のフェイントに引っかかったり…
今はレギュラーだけど、
レギュラー…外されちゃうかも…」
後輩が腕をあげてきているのは、
わたしも気付いていた。
試合でこんなミスするようじゃ…
「…ちゃん‼︎すみれちゃん‼︎」
「え…?」