第29章 -自信-(花巻貴大)
「だよねー♪じゃ、今日!
2人で帰って話聞いてあげてよ?
ね?マッキー♪」
ノリノリなちえりは、
またしてもとんでもないコトを言った。
「ちょっ…ちえりってば…」
「おう!じゃ、着替えたら、
ココに集合でー♪」
でも、花巻くんは嫌な顔ひとつせず、
ニッコリしてちえりの申し出を
快諾してくれた。
「松、オレ、先に着替えて帰るから。
岩はちーちゃんと帰るだろうし、
今日は及川の相手1人で頑張れよ?」
「は?なら、1人で帰るわ。」
「えー?まっつんもハジメくんと
わたしと3人で帰ればいいじゃん♪」
「橘がいいなら、
そうさせてもらうわ。」
わたしが話に入る隙もなく、
話はどんどん進んでいく。
「じゃ、すみれちゃん、後でな。
遅れんなよー?」
「…っ⁈う…は…はいっ‼︎」
花巻くんはわたしに
向かってニッコリしてそう言うと、
わたしの頭にぽんと手を置いて、
男バレの部室に入って行った。
「じゃ、わたしたちも着替えよ!
ハジメくーん!
わたし、もう着替えるから!
ハジメくんも早くしてねーー!」
「あ?おう。わかった!」
ちえりに促され、
わたしは女バレの部室に入ると、
入った瞬間、ドッと汗が出て、
思わず座り込んでしまった。
部室はもう誰もいなくて、
わたしたち2人だけだった。
「よかったじゃーん♪」
ちえりが着替えながら、
ニコニコして声をかけてくる。
「ちえり‼︎もう‼︎
あ…あんなこと急に…‼︎」
「なぁに?迷惑だった?
イヤだった?今からでも断る?」
「ごめんなさい。嬉しいです。」
花巻くんに迷惑だったかな、
嫌がられてないかなって、
すごく心配な反面…
花巻くんと一緒に帰れると思うと、
嬉しくてしかたない。
「素直でよろしい。」
ちえりがわたしの目線に合わせ、
しゃがみこんで見つめてくる。
「すみれは可愛いよ?
バレーだってうまいし!
ま、今日は落ち着いてなかったけど。」
そこでちえりは悪戯っ子のように
ニヤっと笑った。
「でも、もっと自信持ちなって!
その石もあるんでしょ?」
「ちえり〜‼︎」
わたしはちえりに抱きついた。