第29章 -自信-(花巻貴大)
「あっ♪ハジメくん♪マッキーも!
まっつんもいるー♪お疲れー♪」
「おう!
ちー、もう片付け終わったのか?」
「ちーちゃんにすみれちゃんじゃん!
試合、勝ったんだってなー!」
「そういえば、女バレ、
練習試合、今日だったな。」
「ちょっ⁉︎ちえりちゃん、
相変わらず及川さんのコト見えてないよね⁈」
わたしはちえりの声に思わず反応して、
ちえりの指差すほうを見ると、
向かいからちょうど、
花巻くんたちも
部室に向かって歩いてきていた。
「うん!見えてなかった♪」
「たりめーだろ、クソ川!
ちーの前に来んな!」
「うわっ‼︎なんなの、このカップル⁈
及川さんにキツすぎない⁈」
いつもの3人のやりとりが始まった。
でも、なんだかんだで、
この3人の空気は好き。
「あいつら、相変わらずだな。」
松川くんがはぁっとため息をつくと、
花巻くんも同調して、
わたしに話し掛けてくれた。
「つぅか、飽きねーのかな…
な?すみれちゃん?」
「えっ⁈あ…う…うん‼︎
そうだね!」
うぅ…せっかく花巻くんが
話し掛けてくれてるのに、
うまく話せない…
わたしはお尻のポケットに閉まった
スマホをそっと取り出し、
ギュッと握った。
そう…
ガーネットは1月の誕生石…
信頼・愛情・実り、
大切な人との愛を深める石…
花巻くんの誕生石だった。
わたしは花巻くんが好き。
1年の頃からずっと…。
でも、この気持ちを
打ち明ける勇気もなければ、
自信もない。
だから、自分の誕生石と
色味の合わない、
花巻くんの誕生石も
ストラップに付けた。
少しでも自信を持ちたくて…。
「あ!そうだ!マッキー‼︎」
岩泉くんと及川くんと
3人でのやりとりに飽きたのか、
ちえりが輪を抜けて、こちらに来た。
「ん?どしたのー?」
「あのね、試合には勝ったんだけど、
すみれ、すごい凹んでるの!
同じWSとして
話聞いてあげてくれない?」
「ちょっ⁈ちえり⁈
花巻くんに迷惑だよ‼︎」
突然のちえりのことばに、
わたしは慌ててしまう。
「え?全然いいけど♪いつでもOK♪」