第28章 -対抗-(二口堅治)
「せっかくイイ感じだったのにー。」
電車を降りても
相変わらずマイペースな二口くんは、
また唇を尖らせて、
わたしを見下ろしていた。
「あ…あんなコト電車でするのだって、
十分マナー違反でしょ⁈」
そもそも、
あのイチャつきカップルの
ベタベタした感じに
イライラしていたのに、
あれじゃあ、
わたしもあのカップルと同じだ。
「えー⁈だってさー。
すみれさんとイチャつきたかったし。」
「な…っ⁈」
「それに、あのポスターには、
”イチャつくのはやめましょー”なんて
書いてなかったでしょ?」
「だ…だから、それは…」
サラッと言う二口くんのことばに、
わたしは開いた口が塞がらない。
「だって、オレ、すみれさんのコト、
好きなんすもん。」
「え…⁈」
い…今…二口くん…好きって…⁈
「すみれさん、卒業しちゃって、
なかなか会えなくなって、
すみれさんに会いたいなーって思ってたら、
ほんとに会えたからさー。」
わたしがポカンとして固まっていると、
二口くんはわたしの肩を掴んだ。
「あのバカップルに対抗しちゃった♪」
……チュ。