第28章 -対抗-(二口堅治)
絶対わざとだーーーー‼︎
「ふ…二口くん‼︎」
わたしは自分の頬が
赤くなるのを感じながらも、
電車の中なので大きな声も出せず、
慌てて二口くんを押し返した。
「ははっ♪図星〜⁇」
二口くんは悔しいくらい
楽しそうだったが、
次の駅に電車が停まると、
急にわたしの手を引っ張った。
「こっち‼︎」
「え…⁇」
「すみれさん座ってると話しづらい。」
そのまま二口くんに手を引かれ、
ドアの前の空間…
すなわちイチャつきカップルの横に
二口くんと立つコトになった。
「どうしたの?」
二口くんを見上げて尋ねる。
まぁ、わたしだけ座ってても、
たしかに話しづらいけど、
2人とも立っていても、
背の高い二口くんとは、
身長差があるので、
そこまで変わらない気がするんだけど…。
あのイチャつきカップルも、
突然わたしたちが移動したから、
チラチラこちらを見ていた。
「あのオヤジ…
すみれさんの脚観てた。」
二口くんはまたわたしの耳元で囁いた。
「えっ⁈」
「めーっちゃエロい目で見てた。
たまに胸とか覗こうとしてたし。」
「まさか…」
今日のカッコは、
普通の膝丈のスカートに
ブラウスとカーディガンだ。
トレンチコートも、
暑いから前は開けているけど、
そんなエロいカッコでもない。
「はぁぁぁ。」
二口くんは呆れたように
深いため息をついた。
「すみれさんて昔っから、
どっか抜けてますよね。」
「え⁈何それー⁈ひどい‼︎
けっこうしっかりしてる
ほうなんだけどーー!」
突然の二口くんのことばに
わたしは憤慨した。
「しっかりはしてるけどさー。
男はさ、見てんの‼︎
そういうしっかりした人の
無防備な脚とか胸とか‼︎」
「な…っ⁈」
とんでもないコトを
小声で言った二口くんは、
さっき隣にいたあのオヤジと
わたしの間に、
ちょうど壁になるように
立ってくれた。
「ま、男にとっちゃ、
そんくらいの無防備なのは
ちょうどいいんすけどね。
(部活ん時もたまに
際どい時あったしなー。)」
「ふ…二口くん‼︎…イタッ…キャッ…」
二口くんと話していると、
背中に何かが当たり、
電車の揺れもあって、
わたしは二口くんに抱きついてしまった。