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〜Lemon Candy Story〜

第28章 -対抗-(二口堅治)


「ね…チュウ…しようか…♡?」


「バーカ…できるわけないだろ♡」


…。



ココは公共の場だよね⁈
プライベート空間じゃないよね⁈
電車だよね⁈
適度に混んでるんだけど⁈


コソコソ喋ってるつもりでも、
丸聞こえなんだよーー‼︎


バイト帰りで疲れてる時に
せっかく座れたのに、
人の頭上でイチャつくなーーー‼︎‼︎




とは言えず、
スマホで聴いていた音楽の
音量を少しだけあげる。


7人掛けの1番端の席に
座っているわたし…。
ドアの前のわたしの席の横に
もたれてイチャつくカップル…。


「ふふ…だから…ダメだって…♡」


「これくらいなら…♡」


それでも、
二人の世界に入っている
カップルの声は
途切れ途切れに耳に入り、
わたしの表情はどんどん歪んでいく。


しかも、わたしの隣は
小太りのおじさんで、
いわゆる週刊誌…
いわゆるエロ本…を読んでいた。


はぁぁぁ。


スマホとにらめっこをして、
右も左も視界に
入らないようにするのが精一杯だった。


”○○駅〜○○駅〜…”


あ…もう○○かぁ。
3月に卒業したばっかりなのに、
すっかり降りなくなってしまった
伊達工の最寄り駅。


降りなくはなったけど、
やっぱりなんだかホッとするな。


頭上のカップルにも
隣のおじさんにも
イライラしていたけど、
そんなイライラをも
優しく癒してくれる気がする。


「だから…ダメだって…」


「でもさぁ…」


うぅ…前言撤回‼︎
わたしの癒しを返せ〜〜‼︎


「すみれさん?」


「え…⁇」


名前を呼ばれてふと我に返り、
声のするほうを見上げる。


「二口くん⁈」


わたしの前に立っていたのは、
高校の後輩の二口くんだった。


「久しぶりっすね。」


「うん‼︎元気だった⁇
部活頑張ってる?」


思わぬ人物の登場に、
わたしは急いでイヤフォンを外した。


「はい。つか、すみれさん、
すごい顔してましたよ?」


「え…⁇」


ポカンとして二口くんを見つめると、
二口はニヤニヤしながら、
顔を近づけてきて、
わたしの耳元で小声で囁いた。


「ドアんトコのカップルに
イラついてる?」


「な…っ⁈」


「欲求不満だったりしてー♪」


二口くんはわたしの耳たぶに
唇を触れさせながら喋った。


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