第27章 -大胆-(岩泉一)
「あっれー?岩ちゃんと溝口クン、
何してるのーー?って、女の人⁈
えっ⁈誰⁈何⁈溝口クン、
いつのまに彼女できたわけ⁈」
突然オレらの後ろに現れたのは、
相変わらずすぎるクソ川だった。
「はぁぁ…及川…うっせぇよ‼︎
岩泉、ちゃんと説明しとけ〜?」
グッタリした溝口コーチは、
すみれさんから荷物を受け取ると、
いったん宿舎のほうへ戻っていった。
「で?で?誰なの?岩ちゃん‼︎」
「うっせぇよ、クソ川…」
オレも説明めんどくせぇっつぅの。
「あ…檜原すみれです。
貞…溝口さんの従姉妹です。
だから、彼女じゃないよ。
貞くんはまだ彼女いないはず…(笑)」
人差し指を唇の前にあて、
シーッと内緒話をするように、
クスクス笑いながら言うすみれさんに
オレは思わずドキッとしてしまった。
「へぇ。溝口クンの従姉妹かぁ。
すみれちゃん、大学生?」
「そうだよ。」
「へぇ…何年なんですか〜?」
「ん?4年だよ〜。」
学年をサラッと聞いて、
及川はすかさずおおまかな年齢を
計算しているのだろう。
思わず呆気に取られるが、
それがこいつの性分だったと思い出す。
さすがとしか言いようがない。
「何学部なんですか〜?」
「栄養学科だよ。」
「それって栄養士とかの?」
「うん。一応…」
「ほんと⁈やった‼︎」
ギュッ…
及川は急に
すみれさんの手を握りしめた。
「えっ⁇あ…あの…」
すみれさんは及川の怒涛の質問に、
律儀にこたえていたが、
さすがにその行動には
ビックリしたようで、
ポカンとしながら助けを乞うように
オレを見つめてきた。
「おいっ‼︎クソ川っ‼︎」
ガンッ…
「いった〜…痛いよ、岩ちゃん‼︎」
「何してんだよ⁈」
及川がやっとすみれさんの手をはなすと、すみれさんは安心したように、
苦笑いをしていた。
「我が青城バレー部の危機を
救ってもらおうと思ったんだよ〜。」
「え…⁇」
「すみれちゃん、
合宿のご飯作ってください!」
及川のその一言で、
トントン拍子に話が進み、
本当にすみれさんが
食事担当をしてくれるコトになった。