第27章 -大胆-(岩泉一)
「「「いっただっきまーす!」」」
「うめぇっ‼︎」
「すみれさん、次も来てくださいよー!」
練習後の晩飯の時間、
いつも以上に部員の箸は進んだ。
「おや?ハルさんの飯は不満かい?」
「「「いえっ‼︎そんなコトないですっ!」」」
及川がすみれさんに料理を頼んだのは、
バレー部の合宿の飯を担当してくれているウチの学校の栄養士のハルさんが、午前中に転んで右手首を捻挫してしまい、料理ができなくなってしまったからだった。
「ま、すみれちゃん手際良くて、
料理うまいし助かったし、
栄養士の資格取ったら、
いつでもウチにおいで。」
「ありがとうございますっ!」
料理をしている間にハルさんと
すっかり打ち解けたようで、
すみれさんはずっとニコニコしていた。
「すみれさんて彼氏いるんですか〜?」
「すみれちゃん、
及川さんと付き合っちゃおうよ♡」
…っ⁈
「はーなーまーきー⁈おーいーかーわー⁈」
相変わらずチャラい2人のことばに、
溝口コーチがすっ飛んできた。
「あ‼︎貞くん、もしかしてお酒飲んだ⁈」
「え…?いや…その…」
「帰り、送ってくれるって言ってたでしょ?ひどーい‼︎」
溝口コーチはほんのり頬が赤くなっていた。
そんなに酔っているようにも見えないが、たしかに少し酒の匂いがする。
「いや、つい…ノンアルと間違えてだなぁ…」
溝口コーチはすみれさんにタジタジだった。
「え⁈すみれちゃん、帰っちゃうの⁈」
今のやりとりを聞いてた及川は、
すかさず2人の会話に割り込む。
「え?うん。帰るよー。」
「なんでー?泊まってけばいーじゃん!
及川さんと一緒に寝ればいーじゃん!」
「「「おいっ‼︎」」」
及川以外の全員から容赦ないツッコミが入る。
「じゃあ、及川さんが送ってくよ。」
「大丈夫だよ。
貞くんは車だと思ってたから。
歩いて帰るなら1人で大丈夫だよ。」
「それこそ女のコ1人じゃ危ないよ!」
及川は食い下がらない。
「んじゃ、オレが送る。」
「え…?」
「今日チャリで来てるし、
さっき迷惑かけたし、お詫び。」
オレはそのまますみれさんの手を掴んだ。
「オレが送るから。」