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〜Lemon Candy Story〜

第26章 -残業-(黒尾/岩泉/花巻)


岩泉が予想したのより、
10分ほど余計にかかってしまったけど、
わたしの仕事はどうにか終わった。


「はぁ…終わったぁ!」


んっ…とわたしも、
さっきの岩泉のように伸びをする。


でも、誰も「お疲れさま」なんて
言ってくれない。


岩泉が一緒の時は、
その瞬間はふっと優しい顔になって、
「おう!お疲れ。」
って目の前で言ってくれるのに…。


今日はその岩泉はいない。


残業してても、
最後がわたし1人になりそうな時は
いつも理由を付けて他の仕事をして、
待っていてくれていたのに…。


でも、岩泉には岩泉の生活があるもん。


女々しいコトなど言ってられない。


わたしはデスクを片付け、
岩泉に言われたように
空調チェックも忘れずに
フロアの戸締りをした。


「お疲れさまです。」


守衛室に寄って、鍵を預ける。


はぁぁぁ…疲れた…。


ここんトコ残業続いてたし、
岩泉に呆れられちゃったよね…。


仕事しないでボーッとして…って。


「はぁぁぁ。」


下を向いたまま、
大きなため息をついて、
誰もいない会社の自動ドアを出る。


「ったく‼︎でっけぇため息だな。」


「…っ⁈い…わいず…み…⁇」


え…⁉︎な…んで?


顔をあげると目の前には、
先に帰ったはずの岩泉がいた。


「ん…お疲れ。」


岩泉がホットのミルクティーを
差し出してくれた。


「…‼︎コレ…」


「おせぇよ。」


小さなホットのペットボトルは、
生ぬるくなり冷めてしまっていた。


「オレの読みより20分は遅かったな。
戸締り入れても、
もうちょっと早く出てくると思ってたから、買っちまった。わりぃな。」


10分は凹んでいた時間…
もう10分は戸締りの時間だ。


岩泉の読みは当たっている。


「ううん。あの…なんで…?」


「バーカ。女1人残して帰れっかよ。」


…っ⁉︎


「じゃあ…社内にいてくれたって…」


思わず泣きそうになるのを堪えながら、
つい恨みがましく言ってしまった。


言ってしまってから後悔する。


「おまえ、最近残業続いてたろ?
オレがいるほうが
仕事おせぇと思ったからよ。」


「え…?」


「おまえといると…つい話しちまうし。」


岩泉のことばに驚きを隠せず、
わたしはポカンと岩泉を見つめた。


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