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〜Lemon Candy Story〜

第26章 -残業-(黒尾/岩泉/花巻)


「ふぅ…」


集中してPCに向かっていると、
向かいにいる岩泉が一息ついて、
んっ…と伸びをしていた。


残業中、いつもより緩めたネクタイから覗く首筋が男らしくて、思わずドキッとしてしまう。


「もしかして、終わったの⁈」


「あぁ。予定通りだったな。」


時計を見ると、20時55分。
岩泉の宣言時間の5分前だった。


デスクを片付けたら、ちょうど21時だろう。岩泉はいつもきっちりペース配分をして仕事をしている。


「うそ⁉︎ずるーい‼︎」


「は⁈何がずるいんだよ?」


「そういうわけじゃないけどーー。」


岩泉は席を立ち、
わたしのデスク側に来て、
わたしのPCを覗き込んできた。


「おまえ、まだ終わんねーのか?」


ギクっ…。


「う…うん。」


「オレ、帰るからな。」


「え…⁇」


岩泉のことばに思わず横に立つ岩泉ん
見つめてしまった。


「…っ⁉︎(…ドキッ)はぁ…。
言ってただろ?今日21時にあがるって。
約束あんだよ。」


そう…だよね。
岩泉に甘えすぎてた…。
甘えすぎ…というより、
残業してると岩泉と2人きりだから…
1人で勝手に浮かれてた。


仕事しなきゃいけないのに…。


「あ…うん。そうだよね。」


「ま、これなら、あと30分あれば、
おまえなら終わんだろ?」


岩泉は、PCの画面と、
わたしのデスクの資料を見て、
さりげなくわたしの仕事の
進行具合を確かめていた。


「あ…うん。」


「最後、電気と空調チェック忘れんなよ?
おまえ、いつも空調忘れっからな。
ちゃんとチェック表とフロアの鍵、
守衛室に持ってけよ?」


「わ…忘れないってば‼︎
戸締りくらい、1人でできるし!」


わたしが強がって返事をすると、
岩泉は少し微妙な顔をして自分の席に戻り、デスクを片付けて、あっという間に荷物をまとめてしまった。


「じゃ、お先。気をつけて帰れよ?」


「あ…お疲れさま…。」


岩泉は本当に帰ってしまった。


約束って彼女かな…。
もしかしたら、
戻ってきてくれるかも…


ううん…そんなコト考えちゃいけない。


わたしと岩泉はただの同僚だもん…




誰もいないフロアが、
岩泉がいなくなっただけで、
さっきよりも随分広く感じた。


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