第26章 -残業-(黒尾/岩泉/花巻)
「…‼︎(やべっ…んな顔で見んな‼︎)
おらっ‼︎帰んぞ‼︎」
…ギュ。
…っ⁈
岩泉はわたしの手を握り、
そのままズンズン歩き出した。
わたしの思考回路は追いつかない。
「い…岩泉…っ⁈」
「…⁈」
わたしの呼びかけに反応した岩泉は、
少し歩くのがゆっくりになった。
だけど、わたしは、
歩くスピードのコトを
言いたかったのではない。
岩泉の手は冷たくて…
でも、オフィス街の街灯に照らされる
岩泉の耳はほんのりと赤かった。
岩泉はこっちを向いてくれない。
でも、今こっちを向かれても、
わたしも困る。
わたしは耳どころか、顔が真っ赤だ。
「おまえ待ってる間に手が冷えた。」
「え…?」
やっと喋った岩泉のことばに、
わたしはまたポカンとしてしまう。
「だから…このままオレの手…
すみれがあっためろ。」
…っ⁈
「…うん。」
岩泉に引かれるままだった手に
わたしはギュッと力を込めた。
---End---