第25章 -魅力-(及川徹)
「「「おつかれっしたーーー!!」」」
部活が終わり、
皆勢いよくドリンクを飲み、
人によっては部室に戻る前に、
水飲み場で頭から水をかぶっていた。
男のコはいいなぁ。
まだ6月だけど、
体育館もだいぶ蒸し暑いし、
外に出てもやっぱり暑い。
「あー!すみれ〜!
すみれもおいでよ〜‼︎」
声のほうを見ると、
同じクラスの水泳部のちかちゃんが、
プールの中から手を振っていた。
プールへ行くと、
なぜかウチの部のメンバー、
岩泉くんと花巻くんと松川くん、
それに…及川くんもいた。
「ちょうど皆が通った時に声掛けたら、
こんなコトになっちゃって…」
及川くん以外の3人は、
上半身裸でプールに入って、
男子水泳部の皆と遊んでいたが、
及川くんだけは、プールサイドで
女子水泳部のコたちに捕まっている。
「及川くんはココでも人気者だね。」
わたしはプールサイドにしゃがみ込み、
及川くんのほうをチラリと見た。
「ライバル多くて大変だね〜すみれ♪」
ちかちゃんがプールの中から、
えいっと水を掛けてくる。
「そ…そんなんじゃ‼︎
それに…及川くんはわたしのコトは…」
自分で言ってて思わず凹んでしまう。
及川くんには好かれてないんだろうけど、
なんだか悲しい気持ちになってきた。
「何勝手に決めつけて凹んでるの?
ちゃんと前向きにならないと、
なんにも始まらないんだよ?」
「そ…そうだけど…
わたし…好きなのかな…」
「嫌いな人に嫌われても、
凹まないでしょ?
好きな人に嫌われてると
思うからじゃない?」
ちかちゃんのことばには、
重みと説得力がある。
「おい‼︎ちー‼︎タオルあるか?」
岩泉くんがちかちゃんの隣に来て、
ちかちゃんの頭をポンとした。
岩泉くんだけは、
ちかちゃんのコトを”ちー”と呼ぶ。
ちかちゃんと岩泉くんは、
ウチの学年のカップル第1号。
岩泉くんのほうから、
告白したらしい。
「しょうがないなぁ。
じゃ、一緒にあがろう?
すみれ、ちょっと行ってくるね〜。」
「うん!」
ちかちゃんと岩泉くんは、
タオルを取りに部室のほうへ行った。
「お!すみれも入るか♪?」