第3章 -咆哮-(鎌先靖志)
「鎌ちー。すみれとなんかあった?」
突然なんの前触れもなく、
箒を持った茂庭が聞いてきた。
「でもさ、
おまえら最近話してないよな?」
窓際で黒板消しをパタパタしながら、
笹谷も言う。
「な…な…なんもねぇよっ!」
((…あったな。))
あの次の日から…
すみれは明らかにオレを避けていた。
すみれと話さなくなってもう3日目。
今日は久々に部活が休みで、
掃除当番の茂庭と笹谷を待つために、
オレはあいつらの教室にいた。
「なんかあったなら言っちまえよ?
言ったほうがラクになるぞー。
吐けよ!吐いてしまえ!」
「いや…それは言い方が…。
でも、なんかあったなら聞くぞ?」
言うか…?言っちまうか?
「実は…」
オレは3日前のコトを2人に話した。
「「すみれに告られたぁっ⁈」」
「うわぁーーーっ⁈
お前ら、声でけぇよっ!黙れっ!」
オレは慌てて2人の口をおさえる。
「でも、よかったじゃん。
もちろんOKしたんだろ?」
オレの手から逃れた笹谷が言う。
「は…?」
「鎌ちの3年間の想いも、
ついに報われたんだなぁ。」
「な…なにがだよ?」
茂庭までしみじみと言う。
「鎌ちがすみれのコトを好きって
オレら1年の頃から知ってたけど?」
「おう。
影ながら応援した甲斐があったな。」
「な…っ⁈そう…だったのか?」
「いやぁ…でも、よかったなぁ。」
「いや…その…実は…」
オレはまだ返事をしていないコトを
泣き真似をして喜ぶ2人に告げた。
「「はぁぁっ⁈」」
「おまえ、何やってんだよ⁈」
「そりゃ、すみれも鎌ちのコト、
避けたくもなるよなぁ。」
2人が呆れて次々文句を言う。
「わ…わーってるよ。
だから、言おうとしてんのに…
すみれが…」
「おまえも知ってんだろうけど、
あいつ、モテるんだから…
知らねーぞー?」
「そうだよ。
二口も案外マジっぽいし…
ほら、おまえのクラスの廣瀬?
あいつもガチらしいし…」
な…っ⁈廣瀬も…⁈
「おっ!噂をすれば、
すみれと廣瀬じゃん。」
窓の外を眺めていた笹谷が言う。
笹谷のことばにオレは思わず、
窓際に掛け寄った。