第23章 -キス-(花巻貴大)
それに…
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去年の文化祭…
腕相撲大会は自由参加だが、
1年分の学食無料券が
賞品というコトもあり、
参加者が多い。
もちろんオレも参加していた。
前年チャンピオンは卒業していたので、
暫定1位で残ってたのは、
当時3年のラグビー部の先輩だったが、
オレはその先輩を破り、決勝に進んだ。
『花巻くん‼︎すごいすごい‼︎
もう優勝間違い無しだよっ‼︎』
1年の頃から仲は良かったすみれちゃんは、(この頃からオレになびいてくんなかったけど…)1回戦からずっと応援してくれていた。
『まぁなー♪って、決勝の相手、誰だ?』
『『うわぁぁ‼︎こっちも1年だぁ‼︎』』
司会の声とギャラリーの歓声のほうを見ると、反対ブロックの決勝進出者は…
岩だった。
『岩泉くん⁈2人ともすごーい‼︎』
『岩かぁ。ま、負けねーけどな♪』
『うん‼︎花巻くん、頑張ってね!』
すみれちゃんの声援を受け、
岩と向き合う。
『花かぁ。負けねーかんな。』
『こっちのセリフだっつーの‼︎』
2人同時に腕まくりをする。
同じバレー部でオレもそれなりに鍛えてるし、筋肉自体は岩とたいして変わんない気がするのに、岩のがガッチリして見えるのがなんか悔しかった。
『花巻くん!頑張れー‼︎』
でも、すみれちゃんの応援があると
自然と気にならなくなった。
でも…オレは岩に負けた。
『花巻くん、惜しかったね。
でも、すごい接戦だったよ。』
『くっそ〜‼︎』
最初はただ負けて悔しいという気持ちだけだった。
『あ!岩泉くん‼︎』
『よう。檜原も来てたんだな。』
『うん!花巻くんの応援だけどね♪
でも、相変わらず岩泉くん強いね!
中学の時も強かったもんね!
優勝、おめでとう!』
…。
”花巻くんの応援”…
そのことばは嬉しかったけど、
岩と楽しそうに話して、
岩を強いと誉める
すみれちゃんを見ているのは、
なんとなく嫌だった。
それが1年の時の話。
今年ももちろん出たけど、
今年も決勝で岩に負けた。
岩にだけは勝てない…
腕相撲もすみれちゃんも…
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「あの…別に…そういう好きとかじゃ…」
「”そういう”って?」
「それは…あの…」