第3章 -咆哮-(鎌先靖志)
「まぁ、でもほんとスゴいよね。
腹筋6個に割れてる?」
「まぁな♪」
プチ…
「あーー!脱がなくていいから!」
ワイシャツを脱ごうとすると、
あっけなく
すみれに止められてしまった。
「もう!
こんなトコで脱がないでよ!」
「脱いでねーよ!」
すみれが止めたんじゃねーか。
「でも、腹筋より、腕スゴいよね。」
「そうか?」
まぁ、もちろん全体的に鍛えてるしな!
「ね?ちょっと触ってもいい?」
「はっ⁈」
ペタペタ…
…っ⁈⁈⁈
「すごーいっ!すごいすごい!
いい腕してるね〜♪」
返事もしてねーのに、
すみれはオレの腕を触っていた。
しかも、すみれは、
向かいの席から身を乗り出し、
腕を伸ばしているので、
せっかく回避したすみれの胸元が
また見えてしまっていた。
ほんっと…こいつの無意識…怖ぇよ!
「ほら、そろそろやめろって!」
ついにはオレが
すみれをたしなめるはめになった。
「はーい。なに照れてるの(笑)?」
「照れてねーよ!」
はぁ…ほんとすみれにはかなわねぇな。
「うん!やっぱ鎌先の腕いいわ♪」
「は⁈」
「わたしね、腕フェチなの♪」
「はぁ⁈」
何を急に言い出すかと思えば…。
「だから、男のコもさ、
女のコの胸が好きーとか、
お尻が好きーとか色々あるでしょ?」
「バ…っ‼︎ねぇよ!!」
「えー?そうなのー?
絶対あるでしょー?」
不満そうにしながら、すみれは続ける。
「男のコの腕って逞しいし、
ガッチリ守ってくれそうだし。ね?」
そう言うとすみれは顔をあげ、
オレの顔を覗き込んだ。
「な…なんだよっ⁈」
オレは自分が赤くなるのがわかり、
思わずすみれから目をそらした。
「鎌先は守ってくれる?」
「な…っ⁈や…っ⁈あ…っ」
すみれの奴…何を急に…⁈
「あはは…ゴメンゴメン!冗談!
もう遅いし、そろそろ帰ろうか。
残りは朝練のあとにやろ?」
「お…おう。」
カフェを出てからは、
また他愛ない話をしながら、
すみれと並んで歩いた。
人通りはあまりないが、
たまに車や自転車が通る。