第22章 -名刺-(月島明光)
-すみれside-
「まさか月島くんのお兄さんが、
月島さんだなんて…
しかも家も近いなんて、
ほんとにこんな偶然てあるんですね。」
「その言い方…紛らわしい…」
「こら!蛍っ‼︎
失礼だろ⁈すみません。」
兄弟なのにあんまり似てないなぁ。
思わずクスクス笑ってしまう。
「なに笑ってるのさ?」
「べつに〜♪あ、月島さん、
気にしないで大丈夫ですよ。
月島くんはじめ、
生意気な高校生の相手なんて
慣れたもんですから。」
「だから、紛らわしいってば…」
「じゃ、”蛍くん”?」
「……。」
自分で言ったくせに、
あからさまに嫌そうにする月島くん。
「ふふ…じゃ、”明光くん”にします?」
「えぇっ⁈」
弟くんとはまったく異なった
初々しい反応に
わたしはまたクスクス笑ってしまった。
たしか、月島さんて、
今年の新入社員…なんだよね?
なんだか可愛いなぁ。
でも、いつもと違ってお兄さんぽいなぁ。
「月島さん、冗談ですよ?
月島くん、今ぐらいガマンしなさい?
今は紛らわしくても、
揃って会うなんて滅多にないでしょ?」
「別にボクは…」
「蛍、口ごたえしない‼︎
すみません、檜原さん。
こいつ、ほんと生意気で…」
「大丈夫ですよ〜♪」
呼び方騒動がひと段落すると、
月島さんが別の話題で話し掛けてきた。
「檜原さんて
ココから通ってるんですか?」
「いえ。
今は仙台のほうなんですけど、
実家大好きなんです。それに、繋心…
あ、烏養コーチの手伝いもあって、
週末だけこっちに戻ってるんです。」
「…。」
「どうかしました?」
月島さんはハッとしたように
なぜだか黙ってしまった。
この年で実家が大好きとか、
呆れてるのかな…
「あ、いえ。
ボクも実家けっこう好きなんで。
普段はボクも仙台のほうです。」
「じゃあ、一緒ですね♪」
よかったぁ…。
呆れられてたんじゃなくて安心した。
そのまま月島兄弟は、
わたしを家まで送ってくれた。
今度仕事で月島さんに会うの…
楽しみだなぁ。