第3章 -咆哮-(鎌先靖志)
「はぁっ⁈二口、おまえふざけんな!」
オレは思わず二口へ詰め寄った。
「なんで鎌先さんが怒るんですかー?
鎌先さん、
すみれさんの彼氏でしたっけー?
…っ⁈ってぇ…‼︎」
「うぉっ…んんん…っ⁈」
気がついたら、
ドリンクサーバーを1度置いた青根が、
オレと二口の間に入っていた。
つぅか、すみれの彼氏は…
「青根、ありがと♪
もう!二口だって、
わたしの彼氏じゃないでしょー?
彼氏でもない人と
キスなんかしませんー!」
「ちぇっ!なんか、
流れでしてくれそうだったのになー。」
…っ⁈それって…‼︎
二口と付き合ってないってコトか⁈
「するわけないでしょー?
ほら、さっさと歩くー!」
二口はやっとおとなしくなり、
すみれはまたオレの横に来た。
「ね?鎌先?」
「なんだよ?」
「今日部活のあと、ヒマ?」
「はっ⁈な…⁉︎な…なんでだよ⁈」
突然のすみれの質問に
オレは困惑してどもってしまった。
「ウチのクラスも、
今日英語の課題出たの。
ま、わたしはプリント1枚だけど。」
「それがなんだよ?」
「もう!だから、一緒にやらない?
その…コレのお礼ね。
わからないトコ教えてあげる!」
「マジ⁈やりぃっ!ちょー助かる!
よしっ!じゃ、部活のあとな!」
すみれは勉強もできる。
特にこいつは英語が得意だ。
適当にやるしかないと思ってたが、
コレであの課題もどうにかなるな!
「3人とも練習前なのに、
どうもありがとう!
ほんとに助かったよ。」
体育館に着くと、
すみれはニコッとして、
オレらにお礼を言った。
こいつはいつもそうだ。
「ありがとう」を素直に言う。
だから、二口も青根も…オレだって、
つい手伝ってしまうのだろう。
「じゃ、わたしも着替えてくるね。」
すみれは更衣室へ行ってしまった。
「鎌先さん!」
「なんだよ?」
すみれの背中を見ながら、
二口が話しかけてきた。
「抜け駆けずりーっすよ!」
「は⁈」
「すみれさんとデートの約束
してたじゃないっすか!」
「なっ⁈」
「ま、今回は仕方ないけど…
オレも本気っすよ?」
二口はそう言うと、
先に部室に行ってしまった。