第3章 -咆哮-(鎌先靖志)
「おまえ、廣瀬と知り合いだったか?」
廣瀬はサッカー部だし、
すみれとクラスも違う。
「うん?
1年の時委員会が一緒だったから、
知ってるー。」
「へぇ。」
委員会が同じだからって
他のクラスの女子と話すのか?
どいつもこいつもチャラすぎだろ。
「で?なんの課題出されたの?」
「ん?英語の長文読解だよ…。」
「ふーん…鎌先そんなのできるの?」
「ま、適当に書くしかねーだろ。」
オレたちは話しながら歩いていた。
少し前をすみれが歩く。
「あ!二口ー!!」
「は⁈つか、なんで職員室⁈」
体育館に向かっていたはずなのに、
すみれと歩いていたら、
気がついたら職員室で、
二口と青根もいた。
「あれ?青根も来てくれたのー?
ありがとう!」
「……。」
すみれがニッコリして言うと、
少し顔を赤らめ、
青根はコクンと頷いた。
「ドリンクサーバー、3つなんスよね?
オレとすみれさんで3つも
どうやって持ってく気だったんスか?」
「ん?二口が二つ〜♪
あ、なんかダジャレっぽい(笑)」
「面白くないっスよ!
つか、鎌先さんいるじゃないっすか⁈
ちーすっ。」
二口の軽い挨拶…
青根も今気付いたかのように
オレに向かって頭を下げる。
「今更かよっ⁈」
「おまえら、職員室前でうるさいぞ!」
「「「…っ⁈」」」
追分監督が職員室から出てきた。
「すみません。すぐ持ってきます。」
すぐ持ってくとか言ったくせに、
結局すみれは手ブラだった。
オレの横をすみれが歩き、
二口と青根は前を歩いていた。
「助かっちゃった。
バレー部の皆は優しいなぁ。」
「すみれ、おまえ…
はじめからこうするつもりだったろ?」
「えっ?なんのこと〜♪」
…っ⁈
くそっ!
きっとオレにも持たせるために
職員室の前を通ったんだろうが、
それをわざとらしくごまかす姿さえも
可愛くてオレは言い返せなかった。
「すみれさーん!
ちゃんとお礼してくださいよー?」
二口が振り向いて言う。
「二口にはさっきグミあげたでしょ?」
「グミじゃ足りないっすよ。」
「じゃあ、何がいいのよー?」
「そぉっすねー…じゃあ…キス!」