第20章 -名前-(岩泉一)
「え…?」
「オレは逆に…男も女も皆、
おまえのこと”すみれ”って呼ぶから、
オレだけ…って、出遅れ感あって…
焦ってたけどな。」
「焦るの?…岩泉くんが…?」
檜原がビックリしたように言う。
「なんだよ、それ?
オレが焦ったらおかしいか?」
「ううん…。だって、岩泉くん、
いつも冷静で、落ち着いてるし…」
「落ち着いてねぇよ。」
…ギュッ。
「…っ⁈⁈」
オレはそのまま檜原を抱き締めた。
「おまえを誰かに取られるんじゃねぇかって、いつも焦りっぱなしだ。
ぜんぜん…落ち着いてねぇよ。」
「い…わいずみ…くん…?」
「好きだ!」
檜原を抱き締めたまま、
オレは想いを告げた。
「…っ⁈⁈わ…わたしも…好きっ!」
…⁈
檜原はそうこたえると、
オレの背中にギュッと腕をまわしてきた。
オレはまた力いっぱい
大好きな檜原を抱き締めた。