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〜Lemon Candy Story〜

第20章 -名前-(岩泉一)


そのまま黙って檜原の手を引き、
学校を出る…が、そこで我に返り、
檜原の手をはなす。


「悪かったな。約束なんかしてねーのに。」


やっべぇ…
すげぇ勢いでやっちまったけど
檜原に悪いことしたよな…


でも、なんとなくあの場に
檜原を置いていきたくなかった。


檜原が他の奴と喋っているトコを
見ていたくなかった。


「ううん。
岩泉くんと帰りたかったから、
嬉しかったよ。」


…⁈


檜原から返ってきたことばは、
オレにとって意外なものだった。


「ちょっとビックリしたけどね。
手を繋がれたのも、着替えてる時に
部室に来たのも。」


「あれはどう考えたって、
おまえが悪いだろ⁈」


「でも、遅くなった時はいつもあ…」


「は⁈いつも⁈」


「え?」


オレは思わず檜原のことばを遮って、
声を荒げてしまった。


檜原はポカンとしている。


「わ…わりぃ。」


「ふふ…
皆ちゃんとノックしてくれるし、
普段は鍵掛けてるよ?」


…⁈


オレが謝ると、
檜原はクスクス笑っていた。


「今日はわたしが
鍵掛け忘れちゃったの。ごめんね。
岩泉くんに気をつかわせちゃって。」


「別に気ぃつかってるわけじゃねぇよ。」


ある意味…まぁ…その…
一瞬だけど檜原の…見ちったしな…。


「”檜原”って呼ばれて、
岩泉くんだ‼︎って思ったら嬉しくて、
反射的に振り向いちゃったの。
着替えてるの忘れちゃってた。」


は…?嬉しくて…?


「…なんでだ?」


「え?」


「なんで…オレだって思ったら…
嬉しいんだよ?」


「それは…」


…?


檜原は少しだけ頬を染め、
ことばをつづけた。


「”檜原”って呼ぶの、
先生以外だと、岩泉くんだけなの。」


…⁉︎オレ…だけ…⁈


オレは感情を顔に出さないように、
檜原の次のことばを待った。


「もちろん声でもわかるけどね。
”檜原”って呼ぶのは、
岩泉くんだけだから、
わたしにとっては特別なんだ。」


檜原はそう言うと、
ジッとオレを見つめてきた。


「ふぅん…じゃ…
”檜原”のままでも…いいかもな。」


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