第20章 -名前-(岩泉一)
-6 months after-
「あ、見てー!
コレ、1年の時の体育祭♪」
部活オフの月曜日、
何をするわけでもないが、
すみれとオレの部屋で寛いでいた。
オレはまだ引退していなかったが、
バスケ部は夏で3年が全員引退したため、
すみれも今は部活をしていないので、
必然的に月曜日は、
すみれと過ごして癒されている。
すみれが見せてきたのは、
スマホの中の古い写メ。
なぜかすみれとオレと及川の3ショット。
「この時、及川くんが
急に入ってきたんだよね。」
「あぁ。」
よぉっく覚えてる…。
なんせあの時、
及川を散々シメたからな。
「ねぇねぇ、ハジメ?」
「あん?」
あの写メの頃はまだ、
”檜原”と”岩泉くん”だったよな。
すみれと付き合って半年…
オレたちは名前で
呼び合うようになっていた。
「なーんでもない♪」
すみれはそう言って、
オレの肩にもたれてくる。
「はぁ?つぅか、おめぇ。」
「えー?ひどーーい‼︎
じゃあ、もっと重くしてやるぅ‼︎」
重くするというより、
すみれは抱きついてくるだけだ。
コレはコレでオレ得だよなぁ…と思うが、
そんなことはすみれには言わねぇ。
「ねぇねぇ、岩泉くん?」
…っ⁈
ドキッ……。
すみれは今度はオレの耳元で
声をかけてきた。
それだけでも、ドキッとすんのに、
”岩泉くん”て…
「あん⁈なんだよ、急に?」
「ね、”檜原”って呼んで?」
「は⁈」
「写メ見てたら
懐かしくなっちゃったんだもん。
ね?おねがーい!」
……。
「ハジメだって久しぶりに
”岩泉くん”てわたしが呼んだら、
ドキッとしたでしょー?」
……。
図星で言い返せねぇ…。
「あぁ…‼︎うっせぇなぁ!」
…チュ。
「ハ…ジメ…?」
オレはすみれを抱き寄せ、キスをした。
「”檜原”って呼ぼぉが、
”すみれ”って呼ぼぉが、
好きなもんは好きなんだよっ。
おまえはコレでドキッとしてろ。」
「……⁈…はぁい。」
つぅか、昔は散々呼んでたけど、
今更恥ずかしいっつぅの。
---End---