第19章 -本音-(東峰旭)
「旭くん、決めた?」
商店街の中の
行きつけのラーメン屋さん。
行きつけとはいえ、
いつもは、大地と一緒じゃなきゃ
入れないんだけど…。
味は抜群だけど、
なんとなく女1人では入りにくい雰囲気の
昔ながらのお店だから。
「はい。」
「じゃ、頼もうか。
おじさーん‼︎しょうゆラーメンと…」
「とんこつラーメンで。」
「あ!とんこつは大盛りで
チャーシュー追加で♪
あと、餃子一人前でお願いします♪」
「あいよ。」
「すみれさん⁈」
「餃子ははんぶんこだよ?
あ、半ライスも食べたかった?」
「いや、そうじゃなくて、
大盛りとチャーシュー追加…」
「あ…勝手にごめんね。
大地もいつもそうしてるし、
前に一緒に来たとき、
旭くんもそうしてたな…って思い出して。」
「…⁈」
旭くんは目を見開いて、
驚いたようにわたしを見ていた。
「あ!やっぱりイヤだった?変える?」
勝手なことしすぎちゃったかな…。
「いえ…覚えててくれたんだな…って。」
「え?そりゃ覚えてるよー。」
去年、大地とココに入ろうとした時、
偶然旭くんとスガくんに会って、
4人で入ったことがある。
恐るべし男子高校生の食欲…。
大地だけでもすごいのに、
わたしはみるみるカラになっていく
丼を見て、呆気にとられてしまったのを
今でも覚えている。
「あの時は、
お財布の中身足りるかなって、
正直不安だったよ。」
「えっ⁈あ…‼︎すみませんっ!」
冗談のつもりだったのに、
旭くんはめちゃくちゃ慌てていた。
「ウソウソ!冗談だよ。
ぜんぜん大丈夫だったってば。
旭くん、気にしすぎだよ。」
旭くんの背中をバンバン叩いていると、
ラーメンと餃子がきた。
「「いただきます‼︎」」
2人で同時に食べ始める。
「うん!やっぱり美味しいっ!」
わたしが一口食べて満足していると、
旭くんが話し掛けてきた。
「すみれさんも
しょうゆラーメンなんですね。」
「え…?」
「大地もいつもしょうゆラーメンだから。」
大地の名前を出した旭くんは、
何か考えているようだった。
「いつもココ、大地と来るから、
大地の好みうつっちゃったのかな?
旭くんは、前もとんこつだったね。」
「…⁈」