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〜Lemon Candy Story〜

第13章 -ふり-(黒尾鉄朗)***


わたしは重い足取りで、
駅前に向かった。


告白は断る…そう決めていた。


でも、やっぱり、”断る”という
拒否をしに行くのは…
明るい気持ちで行けるものではない。


クロはいつもどんな気持ちで
告白を断りに行っていたのだろう。


そんなコトを考えながら歩いていると、
重い足取りとはいえ、
いつのまにか駅前に着いていた。


キョロキョロして橋岡くんを探すと、
偶然にもこの間クロが告白を断った
噴水の前に、橋岡くんも立っていた。


「あ…あの…‼︎」


わたしが後ろから声を掛けると、
橋岡くんはニッコリ微笑んでくれた。


「よかったぁ。
来てくれないかと思ってた!」


「なん…で?」


「だって、あんな急に…。
しかも、電車の中でって…
なんかストーカーっぽくない?」


「あ…たしかに…」


茶目っ気たっぷりの
橋岡くんのことばに
わたしは思わず笑ってしまった。


「やっぱり…
笑った顔のほうが可愛いな。」


「え…?」


橋岡くんは優しい顔のまま、
ジッとわたしを見つめていた。


一瞬…こんな人と付き合ったら、
幸せになれるのかな…と思ってしまう。


「あ…あの…わたし…」


…⁇
橋岡くんが急に
わたしから目線をそらし、
目を見開いてわたしの後ろを見ていた。


「なーにしてんの?」


「クロっ⁈」


突然わたしの後ろに現れたクロが
わたしをギュッとしてきた。


「なにしてたって…
告白の返事聞いてたんだけど…
キミに邪魔されたトコロ…かな。」


クロを睨みながら、
冷静に言う橋岡くん…。


「じゃ、キミの告白は失敗だ。
すみれの彼氏はオレだから。」


「…⁈」


「クロっ⁈何言って…⁈」


「そっか。」


橋岡くんは弱々しく微笑んだ。


「ち…違うっ‼︎
クロはわたしの彼氏じゃない‼︎」


「「…っ⁈」」


わたしはクロから離れた。


「それって…」


橋岡くんが一瞬、
期待を込めた目でわたしを見た。


「でも…ごめんなさい。
橋岡くんの彼女にはなれません!」


わたしは頭を下げた。


「ちゃんと言ってくれてありがとう。
でも…そいつが彼氏じゃないんなら、
オレにもまだ望みがあるのかな?」


そう意味深なことばを残し、
橋岡くんは行ってしまった。


クロの顔はずっと見ていない。

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