• テキストサイズ

〜Lemon Candy Story〜

第13章 -ふり-(黒尾鉄朗)***


どうしよう…。


朝練も授業も集中できないまま、
昼休みになった。


「おーい?すみれー?」


…。


……。


「すみれちゃーん?
卵焼き、食っちまうぞー?」


………。


「あ…。」


「んっ。相変わらずうめーな♪」


気がついたら目の前にクロがいて、
わたしの1番大好きな卵焼きを
つまみ食いしていた。


いつもなら断固阻止するが、
今はそんな元気もない。


…ほんとにどうしよう。


「すみれ?熱でもあんのか⁈
マジでどーしたんだよ?」


…っ⁈


卵焼きを食べても
何も言わないわたしに驚いたのか、
クロはビックリしたようで、
わたしのおでこに
自分のおでこを当ててきた。


…っ⁈


「熱は…ねーみたいだな。」


「な…ないよっ。どうしたの?」


「どうしたの?って、
こっちのセリフだっつーの。
朝からぼーっとしてやがるし!
具合悪いんなら、
明日延期したほうがいいかと思ってよ。」


あ…明日は…パンケーキの日だった。


思わずクロを見上げてしまう。


「ん?どした?」


クロに…頼もうか…。
いつもの逆…彼氏の”ふり”を…


「あ…あのね…‼︎」


でも…。


もう彼女の”ふり”は
最後にしたんだった。


彼氏の”ふり”を頼んだら、
わたしは橋岡くんの気持ちまで
踏みにじることになってしまう。


もう…そんなことはしたくない。


しちゃいけない…そう思った。


「なんだ?」


クロはジッとわたしを見ていた。


「…ううん。なんでもない。
具合も悪くないから大丈夫だよ。
それより!卵焼き‼︎食べたでしょー⁈」


「は⁈今更かよ〜。変なヤツー。」


わたしは気持ちをごまかすように
いつものようにクロと話した。


そして、結局クロには言わないまま、
部活が終わり、
今日は自主練はしないで体育館を出た。






クロに見られないように…。


/ 579ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp