第13章 -ふり-(黒尾鉄朗)***
「はいはい。
早くちゃんと彼女作りなさいよー。」
わたしはあくまで動じない…
”ふり”をする。
「ちぇーっ。」
スネた”ふり”をするクロ。
「でも、金曜日までは
”彼女”作らないでね?」
「なんでだよ?」
「パンケーキ…
食べに行けなくなっちゃうじゃない。」
「…‼︎ははっ。へいへい。
了解しましたよー。」
家の前に着き、
クロはわたしの手をはなした。
「ありがとう。気をつけて帰ってね。」
「おう。」
…?
クロはわたしをジッと見つめてきた。
クロとわたしの身長差は約20cm。
女子にしては背の高いわたしだけど、
クロといるとそれをあまり感じない。
「どうしたの?」
「バイバイのチューは♪?」
…クロはいつもニヤリとしながら、
こんなコトばかり言う。
「しーまーせーんー。」
「ちぇーっ。」
「帰ったらちゃんとメールしてね?」
時間も遅くて心配なので、
クロに言った。
「…⁈へいへい。」
「おやすみ。」
「おう。明日寝坊すんなよ?」
「そっちこそ。」
そう言うと、クロは笑いながら、
手を振って帰っていった。
そして、それから30分後、
クロからメールがきた。
『着いたー♡』
♡マーク付きで。
わたしが彼女の”ふり”をしている間は、
なぜかメールまで恋人仕様になる。
『無事に着いてよかった♡
今日も送ってくれてありがとう。』
わたしも♡マークを付けて返信する。
『金曜日は学校終わったら、
ダッシュで行くからなー。』
『うん!でも、クロ、
そんなに甘いの好きだったっけ?』
『早く行って順番並ばなきゃだろ♪
まだ月曜かよー。
早く金曜にならねーかなー。』
子どものようなクロが可愛らしい。
『そうだねー。
金曜日、楽しみだね♡』
♡マーク付きメールもだけど、
彼女の”ふり”をしている間は、
わたしもいつもより素直になれる。
可愛くないな…わたし。
『おう!愛してるぜ、ハニー♡♡』
クロからのメールに
思わず笑ってしまう。
『愛してるよ、ダーリン♡♡』
おふざけメールはいつもコレで終了。
嬉しさと虚しさの間で苦しいのに、
わたしはいつも
一瞬だけの幸せを取ってしまう。
わたしは弱い。