• テキストサイズ

〜Lemon Candy Story〜

第13章 -ふり-(黒尾鉄朗)***


クロの彼女のふりをする

家まで恋人つなぎで送ってもらう

次の部活休みの日に報酬をもらう


それがいつのまにかできた、
クロの彼女のふりをした時のルール。


報酬というか、
初めて頼まれたときに、
『映画付き合ってくれたらいいよー』
そう言ったからか、
毎回、クロは映画とかランチとか、
何かをおごってくれていた。


クロの”彼女”でいられる
不思議な数日間だ。


初めて頼まれたのは2年になってすぐ。
他校の女のコに告白され、
断ったのになかなか引いてくれない。
納得させるために
彼女の”ふり”をしてほしい…と。


その時は何も考えておらず、
むしろ、クロに頼られて
嬉しいと思った。


”ふり”なのに…”彼女”ということばに
わたしは舞い上がっていたから。


ボロが出ないように
2人で色々設定を考えた。
わたしの理想いっぱいの設定…。


そして、
初めてクロの彼女の”ふり”をして、
クロを呼び出した女のコの所に行った。


わたしは後悔した。
そのコもさっきの女のコのように、
真剣にクロに告白していたから。


わたしにはできないのに、
このコたちの想いを踏みにじる
騙すようなコトをしている。


でも、それ以来、
他校のコに告白された時は、
クロはいつもわたしに
彼女の”ふり”を頼んだ。


後悔していたクセに、
クロに押し切られると、
わたしはクロの頼みを断れなかった。


彼女の”ふり”でもいい。
クロの”彼女”でいたかった。


わたしは最低だ…。


「なぁ?
すみれんトコも金曜休み?」


「そうだけど?なんで?」


男バレと女バレは、
広い体育館を一緒に使っている。
金曜日は体育館点検があった。


「だーかーらー!
パンケーキ行くんだろ?
体育館点検で部活できねーじゃん?
金曜でいい?」


「あ…うん。」


なんだかんだクロは、
律儀に”報酬”という名の、
わたしとの約束を守ってくれる。


「なんかさー、オレらって
けっこう恋人っぽいよなー。」


「えっ⁈」


「学校でもけっこう一緒にいるしさー」


まぁ…一緒には…いる。


「もうほんとに付き合っちまうか?」


わたしの顔を覗き込みながら、
ニヤリと笑うクロ…。


…っ⁈


クロのことばに
わたしは固まってしまう。


でも…

/ 579ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp