第13章 -ふり-(黒尾鉄朗)***
駅前に行くと噴水の横に、
小柄で可愛らしい女のコがいた。
「この手紙くれたのキミ?」
少し離れた所で、
同じ制服の女のコが2人、
こちらを見ていた。
きっとこのコの友達だろう。
「は…はい!あ…わたし…」
目の前の可愛らしい女のコは、
顔を真っ赤にして、
上目遣いでクロを見ている。
「黒尾さんの試合を観てから…
ずっと好きだったんですっ‼︎」
女のコが告白する間も、クロは
わたしの手をはなさなかった。
わたしの胸が1番苦しくなる瞬間…
女のコはクロの隣に
”わたし”がいる意味に気づいている。
それでもちゃんと
自分の気持ちを伝えた。
…わたしにはできない。
「ありがとう。
でも、オレ、彼女いるんだ。」
申し訳なさそうに彼女を見たあと、
愛おしそうにわたしを見るクロ…。
わたしはいろんな意味で苦しくて、
あまり彼女を見ないようにして、
ぺこりと頭を下げる。
「あはは…そう…ですよね。
黒尾さんみたいなステキな人なら、
彼女いますよね。急にすみません。
でも…ありがとうございました!
告白…聞いてくれて…。
じゃ、失礼します。」
可愛らしい女のコは、
泣くのを堪えているのに涙は見せず、
ニッコリ微笑んでおじぎをしてから、
友達のほうに走り去っていった。
きっと友達の所で泣くのだろう。
「ふぅ…。今日のコは
すんなりわかってくれてよかったな。」
女のコが走り去ったトコロで
いつものクロに戻る。
相手のコがあまりにごねると、
クロは「キミはタイプじゃない」と、
わたしを褒めまくる。
相手のコと逆の部分を…。
相手が背の低いコだと、
背が高いコが好き…
スラッと細いすみれがいいんだ。
相手がギャル系だと、
清楚なコが好き…
すみれはいつもおとなしくて、
オレに尽くしてくれるんだ。
…デタラメばかり。
「今日のコも可愛いコだったのに…。」
「そうかー?」
手をはなそうとしたが、
クロはそれを許してくれなかった。
ギュッとさらに強く握られる。
「まだあの辺にいるだろ?
家までダメ。」
「別に家までじゃなくても…。」
「遅いし、送ってくって。
あのコら、つけてくるかもしんねーし、
つーか、いつもそーしてんじゃん。」