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〜Lemon Candy Story〜

第13章 -ふり-(黒尾鉄朗)***


「はぁ…
今日でほんとに最後だからね?」


部活終了後、
わたしは好きな人の隣を歩きながら、
ため息をついて、好きな人に念を押す。


「へいへい。わかってるって。」


そう答えるのは、わたしの好きな人…。


黒尾鉄朗。


3年間同じクラスだけど、
何を考えているのかよくわからない。


1年の時の最初の席替えで隣になり、
同じバレー部で同じポジション…
話が合い、意気投合した。


基本的に捻くれてるけど、
時折優しい彼に
わたしはすぐに心を持っていかれた。


好きな人と校門前で待ち合わせをし、
一緒に下校しているのに、
なぜこんなに憂鬱かというと…


「ちゃんと”鉄朗”って呼べよ?」


「わかってるー。」


「オレらは付き合ってー?」


「1年7ヶ月ー。」


現在9月。
わたしとクロは3年生。


1年のバレンタインに
クロがおねだりして、
わたしがチョコを渡し、
そのチョコを受け取るとき、
クロがわたしに告白した…という
女のコとしては胸キュンな設定。


「せーいかーい。」


1年のバレンタイン…
2月から付き合っている設定なので、
現在付き合って1年7ヶ月…なのだ。


「今回の報酬はー?」


「んー?よし!チューしてやる!」


「…してほしくなーい!
表参道のパンケーキ屋さんでしょ!」


…冷めたように返事をするけど、
ほんとは一瞬ドキッとした。


「…へいへい。わかってるよ。」


「今回のコ…桜川女子のコだっけ?」


「んー?そうだったっけなー。」


「もう‼︎しっかりしてよね‼︎」


「おまえがしっかりしてっから、
大丈夫だろーー?」


…大丈夫じゃないよ。


「…?そろそろ気をつけろよ?
待ち合わせ、駅前だから。」


わたしが返事をしないでいると、
クロがわたしの手を取り、
指をからめ、恋人つなぎをした。


…‼︎


「じゃ…よろしくな。すみれ。」


手を繋いでいないほうの手で、
クロはわたしの頭をポン…とする。


「うん。…大好きだよ…鉄朗。」


「…っ⁈」


一瞬クロがたじろぐ。
…そんなにイヤかな…。


「冗談だって(笑)
なかなか演技派でしょ?」


ぜんぜん冗談ではない。
でも、わたしが素直になれるのは、
この瞬間だけ…。


クロの彼女のふりをしている間だけ。


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