第1章 *幽かに、愛*
「高田。 もうそろそろ……、」
「ううん、私もう少しだけいます。 二宮くんのご家族が帰ってくるまで。 ……ギリギリまで、いたいから」
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ベッドで横たわる俺の手を握りながら
佳奈は言った。
もう涙は乾いているが、声には若干涙が残る。
翔さんは、そんな佳奈を哀れむように見ながらも、「分かった…」とポツリと言葉を残し病室を後にした。
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「二宮くん、……」
・
佳奈はまた、俺の名前を呼んだ。
あ〜もうまた泣く。
泣くな泣くな。
オマエは本当泣き虫なんだから。
去年の宿泊研修でも、泣いてたろ。
ナイトウォーキングと題して、夜に肝試しをしたとき。
幽霊なんているわけないのに。
お化けなんているわけないのに。
「絶対いるの〜!!」って、
肩震わせて怯えて。
俺にしがみついて。
わっ!!、って驚かしてやったら
案の定ボロボロ泣いて。
「二宮くんなんか大ッ嫌い!!!」、って言われたときはさすがに焦ったけど。
……可愛かったな、あの時のオマエの泣き顔。
だけどもう泣くな。
もう、その涙拭ける腕も、胸も、貸してやれねえんだから。
・
佳奈は確かに、俺の手を握っているのに。
俺はその体温をまるで感じられない。
あぁ、俺と、ベッドに横たわっている俺は
所詮別もんってことか。
……こうなるくらいなら、
もっと早くに、オマエに……
・
・
「……」
「……え?」
.
.
嘘だろ……、
今、佳奈と目が合っ……
・
・
「高田、」
「櫻井先輩……」
・
・
わぁー、ビックリした。
なーんだ、翔さんのこと見てたのかよ。
馬鹿、ふざけんなよ。
ビックリしすぎて死ぬかと思っただろ。
……、
もう、とっくに、死んでるけど。