第1章 ひとつ×××
それはそれとして、性技を駆使し、男から精だけではなく金を吸い上げてしまう職業とは、どれほど過酷なのか気になっていた。
白澤から受ける説明では、至高のサービス業だそうだが、どうも納得のゆくモノではない。
ウダウダぐだぐだと考えをめぐらせながら、野干カフェに長居をしていた。
気付けばすっかり夜の店の時間となり、カフェは営業こそすれ客層や客足は変化していた。
時折頼む注文で随分居座っていた為、店の店主を勤めていた檎が客引きの休憩として私の席へとやってきた。
許可も取らずにテーブルの正面。鬼灯の座っていた席へと座る。
「席よろしいかね?失礼するよ。姐さん、随分長いこと白澤さんをお待ちみたいですなあ」
「(座ってから聞くんだなあ。)…、別に待っている訳じゃあないんですけどね。単純に暇を持て余してるだけですよ。檎さんこそ、もう仕事はいいんですか?」
手持ち無沙汰で銜えていたストローは、歯で噛んだ為にすっかりボロボロになっている。
行儀が悪い事は百も承知で、プッと空いたグラスへと吐き出した。
檎はキセルを燻らしながら、組んだ足をプラプラと揺らしている。
左腕はテーブルへ、そのまま適当な野干の従業員に「ちぃと茶でも煎れてくれんかの」などと頼んでいた。
「ワシは休憩じゃ、休憩。ヌァハハ」
「1日中、外の椅子で寝転がっての客引きでも、休憩が要るものなんですねえ」
やや嫌みったらしくニヤリとネムは口角を上げ、テーブルに肘を着いて頬を両手に乗せ、檎をじいっとみる。