第3章 誘拐
「ッは、はぁッ、…ッはぁ……」
自宅まで走って帰ってきた南雲は、息を切らしながらマンションのエレベーターに乗りボタンを押し、壁に寄りかかって息を落ち着かせる。
(…キス……された……ッ)
まだ顔の火照りが取れず、走ったせいかキスのせいか、心臓は爆発しそうなくらいに動いている。
エレベーターが指定した会に付けば、フラフラと自宅の前まで向かい、鍵を開けて中に入るなり玄関で座り込んでしまう。
「…なんで……ッ、」
キスが初めてだったわけではない、そういうわけではないのだ。けれども、今日会ったばかりの、ほぼ初対面の相手に、何の前触れものくキスをされれば、誰でもこういう反応をするはずである。
自分の親指で唇に触れてみる、まだ感触が残っている。
「……もう…明日から、学校行けないじゃん…」
溜息を吐いて、南雲は、初日の夜から既に悩み事が出来ていた。