第3章 誘拐
青峰が隣に座れば南雲は驚いて、二度見をしてしまった。
「……んだよ」
南雲の二度見に怪訝そうに眉を寄せながら睨みつけてくる青峰に、南雲は苦笑いをして誤魔化した。
「いやぁ、青峰君って、あんまり人と関わらなオーラ?って言うのかな、出てるからさ……ビックリしちゃって……」
ヘラヘラと笑いながらなんとか言い訳をする南雲に、青峰は何も言わずにただ見つめていた。
ただ、南雲の顔をじっと見つめている。南雲も段々恥ずかしくなってきて、俯いて自分の足を見つめていた。
すると、不意に視線が上がって青峰の顔が近くにある。顔が近くなり、唇が近くなり、青峰と南雲の距離はゼロになった。
(……え?)
南雲はこの状況を理解できなかった、暫く呆然としてると、青峰は口を離した。
そこでようやく意識が戻ってきた南雲は、耳まで真っ赤にしながら立ち上がって二歩後ろに下がった。
「なっ、え……えぇ!?」
まだ少し濡れている唇を抑えながら、わけがわからないといった瞳で青峰を見つめる。
対して青峰は、いつも通りの済ました顔で相手を見つめている。
「なな……い、今、何を……!?」
「何って…キスだけど。」
南雲の質問に馬鹿にしたように鼻で笑えば、妙に色気のある瞳で南雲を見つめる青峰に、南雲は更に顔を赤くした。
「ッ!!!ぼ、僕、もう帰るね!!!」
これ以上青峰に見られていたら自分がどうにかなりそうで怖くなり、鞄を拾い上げ逃げるように公園を後にする南雲を、青峰は小さく笑いながら見つめていた。