第3章 誘拐
自宅に入り、玄関で座り込んで、先ほど青峰にキスされた唇をそっと触ってみる。
「……ッ、」
なんとなく、なんとしなくても、なにがなんでも、何故だかわからないけど、顔が熱くなっていく。そんな感情に南雲は襲われていた、なぜ自分は青峰にキスされたんだろう?それで頭がいっぱいになった。
初めてだったわけではない、キスに慣れてないわけでもない、そこそこの経験はしているのだからこんなことには慣れているつもりだった。
「…うっわー……、」
自分でも恥ずかしくなるくらい顔が熱くなっているのが分かる、それと連結しているかのように心臓がバクバクと脈を打つ。
「……ご飯、ご飯食べよう。」
何もできない、何もしたくないようなモヤモヤとした気持ちでいた南雲は、気を紛らわそうと立ち上がって靴を脱ぎキッチンに向かう。
冷蔵庫からミネラルウォーターを出して一口飲んでから、冷凍食品のグラタンを出して電子レンジに突っ込む。
料理を作れるような心境ではなく、南雲は電子レンジのボタンを押してリビングのソファーに座る。
「あー……いたずら?僕の事、嫌いだから?」
何故まだ気にしているんだろう、直ぐに忘れてしまえばいいのに、南雲は自問自答しながらブツブツと独り言をつぶやいていた。
生唾を飲み込み髪をくしゃくしゃと乱せば、ソファーに顔を埋めて動かなくなる、動けなくなるっといたほうが正しいのだろうか。兎に角南雲は、恥ずかしくて仕方がなくなっていた。
そのまま、目を瞑って騒ぐ心臓を沈めることに集中する。