第4章 監禁
監禁開始から5時間
静かな空間というのは、時間を長く感じさせる。
例えば学校の試験の時間、生徒たちがシャーペンを紙に走らせる音と、時計の秒針のカチカチという音だけが広がる。
あの時間は、時の流れが遅く感じる。
秒針が、とてつもなくゆっくり動いているかのような錯覚に陥る。
あれと似たような感覚に南雲は襲われていた。
五時間という時間が、もう何十時間も過ぎているように思えていた。
手錠が外せないかは何十回と試した、部屋の範囲を確認しようと歩いてみたりもした。
だが全て不発。
手錠は馬鹿みたいに頑丈で、足と身体に繋がれた鎖は、精々3メートル程しか伸びない。ギリギリまで伸ばしたとしても、自分の近くには空間しかなかった。
「……喉が……渇いた…………」
南雲は、枯れた声でそう呟いた。
すると、ザザザっつというノイズ音の後に、スピーカーの向こうから、あの声が聞こえてきた。
「人間って不思議なものですよねぇ?こんな状況下に置かれても、喉は渇くんですね。」
こんな状況で喉が渇く自分が嫌なのは、こっちだって同じだ。でも、喉がかれるくらい叫んでいれば、喉も渇く。
「分かりました。」
その言葉が聞こえて音は途絶えた、暫くすると真っ暗だった部屋に明かりが灯った。
と言っても、部屋の中にはいいってきた誰かが手に持っているランタンの明かりだけだったが。
南雲はその光を見つめた、妙な仮面を付けた長身の男がこちらに向かってくる。片手にはランタンを、反対側の手には犬用の皿を持っていた。