第3章 誘拐
練習が終わり、全員が部室に入っていく。
「あ…もうこんな時間か……、」
腕時計を見ながら眠そうに目を擦る南雲に、一人部員が話しかける。
「あの……」
「うっわ!?」
声を掛けられるまでその存在にすら気づかなかった南雲は、目を丸くしながら視線を上げてその子に目をやる。
「い、いつからそこにいたの……?」
「さっきから居ました。」
静かにしゃべるその子は、南雲をじっと見つめている。
「あ、あーっ……と?どうしたのかな、僕に何か……」
まだ少し同様を隠せないといった感じで目を泳がせながら、首を傾げてその少年を見上げる。
「……さっき、青峰くんと何を話してたんですか?」
「……え?」
そんな事に興味があるのか、と思いつつも何を話したかを教えると、そうですかとだけ言って部室に戻っていってしまった。
「えー……、……あの子、確か……黒子、テツヤ君、だったかな…?」
黒子の後ろ姿をぼーっと見つめてからゆっくり立ち上がれば、鞄に荷物を詰め南雲は体育館を後にした。
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帰り道、公園に寄って今日のことを振り返る。
「あー…馴染めるかなぁ……僕みたいな奴が、あんな強豪校のマネージャーなんて……」
自身が全て口から出てしまう様な溜息を吐いてから途中で買った缶コーヒーを啜る南雲を見つけて、一人の少年が駆け寄ってきた。
「……お前、こんなとこで何してるんだよ」
「え?あ、青峰君?」
暗闇に色黒の肌のせいか、姿はよく見えないが、声で判断して青峰の名前を出した。
「あぁ、で、何やってんだ?」
「あー、えっと…まぁ、今日の反省?」
二度目の質問に、苦笑いをしながら頬を掻く姿を見て、ふぅんというと何故か青峰は南雲の隣に座った。