第3章 誘拐
「すいません、驚かせてしまって……。」
「あぁ、いや、大丈夫……って、っ君、いつからいたの?」
「今来たところです、そしたら、南雲さんが青峰くんに……」
南雲は少しホッとした、どうやら青峰にキスされたところは見ていなかったよだった。南雲は『青峰くんの頬に蚊が止まっていて、叩いた』と、少し態とらしい嘘をついた。
「ご、ごめんね青峰君、その……」
「……。」
青峰は、一度南雲を鋭い瞳で見つめてから黒子に目をやり、舌打ちをすればそのまま体育館を後にした。
南雲はバクバクと激しく脈を打つ心臓に手を当て、早く静かになれと思いながら黒子を見た。
「く、黒子くんも、早く教室に行ったほうがいいよ?予鈴、鳴ったし、さ……ッ」
悟られないよう必死に笑っている南雲を見て、無表情のまま頷いた黒子に、南雲はホッとして肩を落とした。
だが、黒子が南雲の横を通り過ぎる時に、小さく発した言葉に、南雲は動けなくなった。
「声、震えてますよ、南雲さん?」