第3章 誘拐
程なくして朝練は終わり、部員たちが制服姿に着替え次々と体育館を後にする。
「みんなお疲れ様、あ、お疲れ様~」
南雲が一人一人丁寧に挨拶をしていると、急に口が止まった。体育館から一番最後に出てきたのが、青峰だったからだ。
( 落ち着け )
南雲は直ぐに笑顔に戻ると、ニッコリと笑って青峰にも挨拶をした。
その様子を見た青峰は、鼻で笑った。
「よぉ、南雲サン。」
「……お疲れ様、青峰く」
青峰が南雲の横を通り過ぎるその一瞬で、青峰は南雲の腕を引き寄せ、キスをした。
昨日の夜のような簡単なキスではなく、ねっとりと、濃厚なキスだった。
「ぁ、お…ッん、」
息が出来ずに苦しそうな表情を浮かべる南雲とは違い、青峰は楽しそうに南雲の口内に舌を侵入させる。
「ッ!!」
その瞬間、バチンッ!と破裂音のような音がい響いた。
南雲は、青峰の頬に見事な手形を付けた。
「……てぇ…、」
青峰は不機嫌そうな声でそう言うと、頬を押さえ俯いて黙ってしまった。南雲がハッとして青峰に声をかけようとすると、背後から人影が近づいて声を掛けた。
「……あの、すみません」
「ッ!!!え?あ、な、何?」
南雲が驚いて振り向くと、其処には、いつからそこに居たのか気づかなかったくらい影の薄い、少年が立っていた。