第3章 誘拐
「ッッ~~~!」
恥ずかしいやら痛いやらで顔を赤くしながら早歩きで学校に向かう南雲に、声をかける少年がいた。
「南雲さん。」
「赤司君!おはよう。」
南雲が額を撫でながら後ろを振り向くと、制服をきっちり着た赤司が立っていた。
「おはようございます、どうしたんですか?」
額を抑える南雲を不思議そうに見つめる赤司を、南雲は心配させないように笑って誤魔化した。
「いやぁ、ははは……ちょっとぶつけただけだよ。それより赤司君、学校行くんでしょ?一緒に行こうよ」
「……はい、そうですね。」
南雲の様子から大体の状況を把握した赤司は、それ以上は何も聞かず、小さく笑って南雲に歩幅を合わせて歩き出した。
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「赤司、青峰が」
「嗚呼、真太郎も気がついたかい?そうなんだよ、青峰が練習に来てる。」
「峰ちん、いっつも朝練来なかったのにねぇ?」
赤司と、メガネ姿にテーピングの目立つ緑間慎太郎、そして一番の高身長の紫原敦が、青峰を見ながら話していた。
「青峰の奴、一体どうしたのだよ。今日は雨でも降るのか?」
「こら真太郎、滅多なことを言うものじゃないよ。青峰も、少しはやる気を出してきたんだろう。」
「そぉかなー?俺は、あのマネージャーのせいじゃないかと思うんだけどなぁ」
紫原は、南雲を見つめ上がら額の汗を拭った。
赤司も、南雲を見つめて小さく笑えば「そうだね」と意味がありそうな言い方をしてそのまま練習に戻ってしまった。